断虫亭日乗

過ぎ去る日々の思い出をつづるだけ

夏の準備

夏の昆虫教室・展示の準備が本格化しつつある。

今日は「カイコの糸取り教室」の予行演習。楽しい教室になりそうだ。

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小松君の写真展「裏山の昆虫」の準備も開始。今日だけでかなり進んだ。パネル切りは結構コツがいるので、慣れない小松君には難しいようだ。私は小松君の切ったパネルを切り直す作業を行った。案の定、小松君は指先をバッサリと切って、血まみれになっていた。

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奪取村

昨晩、「イッテQ」を見ていて、大学の畑の草が気になったので、今日は鎌を使って、2時間ほどかけて徹底的に草を刈った。疲れたがすっきり。

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トマトが誰かに盗まれているようだ。以前より、農学部の畑で野菜が盗まれると聞いていたが、自分も被害を受けるとは。これからやっとおいしいトマトが食べられると思ったのに・・・。なにか対策を考えなければ。

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マジャク釣り大会

以前から行きたいと思っていた熊本県荒尾市の「マジャク釣り大会」に参加した。「マジャク」とはアナジャコのこと。江戸川放水路河口で何度かやったことがあるが、「本場」の有明海でやってみたい。この大会について知ったのは、七年前の玉置さんのデイリーポータルで、以来、ずっと気になっていた。

http://portal.nifty.com/2007/09/03/b/

荒尾市の広報:

http://www.city.arao.lg.jp/cal_copy/pub/detail.aspx?c_id=7&id=2786

ちょうど梅雨明けの好天。漁協で7時半に受付した。1000人の募集があっという間に埋まってしまったようだ。

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目の前に広大な有明海の干潟が広がる。荒尾干潟は、日本で2番目に野鳥に飛来が多い干潟だそうだ。

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それから大会役員の挨拶があって、8時に干潟へ移動。干潟の真ん中に砂利道が通っていて、ズボズボと足がとられないようになっている。1000人もの人々が沖に向かって歩くのは壮観。

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アナジャコの巣口は干潟の表面から10センチくらい下にあり、まずは泥の表面を削って、その巣口を露出させる必要がある。その作業を「釜立て」というそうで、今回は貸し出し鍬を借りてやってみたのだが、どうにも難しい。

すると、その様子を見かねて、漁師のおじさんが釜立ての実演をしてくれた。ひょいひょいと簡単にやっているが、泥の表面は重い貝の殻が中心で、とても力がいるし、「釜」のなかに水が入らないように土手を広げるように掘っていく必要がある。これがとても難しい。

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さすが有明海。ものすごい密度の穴。おじさんによると、この釜だけで、上手にやれば50匹くらいは採れるという。

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釣り方は面白いものである。まず、穴に書道用の筆を挿す。すると、異物か同種他個体だと勘違いして排除しようと、アナジャコが筆を押し出しに上がってくる。そこを、上手にアナジャコの両方のハサミをつかんで、引っ張り出すのである。しかし、これがなかなか難しい。うまくやらないと片方のハサミをつかんだ時点で、自切してすぐに逃げてしまう。いかに両方のハサミをつかむかにかかっている。

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またまたその様子を見かねたおじさんが、細かくコツを教えてくれた。それから飛躍的に捕れるようになった。と言いたいところだが、実に奥が深く、ちょっと上手になった程度だった。この難しさこそが「マジャク釣り」の面白さだと思う。

おじさんに「お、うまくなったね」と言われたけど、まだまだ。そして、「これで釜立てができるようになったら、こっちは商売あがったりだよ」とのことだった。それくらい、年季を必要とするものなのだ。

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こちらの10倍以上の効率で釣り上げるおじさんにもたくさんいただき、食べるには十分のアナジャコを確保し、干潟をあとにした。

荒尾市の職員総出のお祭りといった雰囲気で、どなたもとても親切で、その点でも楽しい一日だった。また行きたいけど、釜立てができる自信がない・・・。

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1000人もの人たちが干潟のあちこちで楽しそうにアナジャコを釣っていた。それでも、いくらでも掘るところがあるくらい、荒尾干潟は広大だった。

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天ぷらや煮付けなど、どれもおいしかった。一番よかったのは、素揚げして、オイスターソースで炒めたもの。アナジャコは殻がやわらかく、ソフトシェルクラブのような感じなので、ソフトシェルクラブの料理にすべて応用できるものと思われる。もっともてはやされても良い食材だと思う。

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参考



本、本

げっちょ先生に「昆虫の描き方」をいただいた。題名の通り、昆虫の絵を描く方法について細かく説明されているのだが、それぞれの昆虫やその生態についての解説が非常に面白い。おすすめの一冊。

「ミミズ図鑑」もすばらしい。身近な大型の生物でありながら、ミミズほど名前のわからないものはいないだろう。非常に未記載種が多いそうで、日本産種の1割程度しか載っていないと書いてあるが、人里の普通種については十分に同定できそうである。とにかく画期的な図鑑。

「稚魚図鑑」もいただいた。「魚類検索」に続く、東海大出版の大仕事である。魚類の形態的多様性はすばらしいが、稚魚はもっとすごい(逆に稚魚だとみんな同じような姿のものも少なくない)。美しい図を見るだけでも十分な図鑑といえる。

 

むねとしの森

校了に近づいた。99%校了。

大手だけあって、校閲部の人が見てくれるのだが、とにかく細かい。虫の名前も全部調べてくれる。でも、その前に、講談社で校閲をやっていただいた本郷さんに見ていただいたので、校閲部の精鋭が見直しても、大きな間違いはほとんどないという素晴らしさ。本当にありがたいことです。

忙しさにかまけて放置していた水槽だったけど、コイ科のTorやナマズのClariusが大きくなってきたので、もう1本水槽を準備して、Rasbora elegansと一緒にそこに移した。背景に100円ショップで買ったスダレを取り付けた。落ち着いた雰囲気で、結構かっこいい。

廊下でその水槽の台を組み立てていたら、見知らぬ女の子が話しかけてきた。そして、「これ自分でイノシシ解体して作ったんです」とかっこいいバッグを見せてくれた。「ちはるの森」の人だった。

http://chiharuh.jp/

前から「ちはるの森」は知っていたので、まさかこんなところで会えるとは思わなかった。

 

時計の電池がなくなったので、駅前の時計店にいったら、臨時休業で電池交換できなかった。それで今日は、一日中、ひどく遅れている時計をしていたのだけど、それを無意識で見て、信用してしまい、いろいろと時間を間違えて酷い目にあった。間違った時計ははずしたほうがいいと学んだ。

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天使を展翅

チェンマイから生のままビワハゴロモを持ってきたので、急いで展翅した。

その前に、前回の旅行でゲンカチャンで採集したビワハゴロモも展翅板から外した。

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チェンマイでは3種採れた。

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Westwood (1843)のArcana Entomologicaのヒゲブトオサムシの論文と手彩色の図版を入手した。博物画はかっこいい。意味もなく花があるのもいい。

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現実社会

朝一番で帰国。さっそく仕事を開始する。虫は今一つだったが、楽しい旅行だった。タイはやっぱり良い。人々がいい。住みたい。食べ物がおいしい。しかし、そのぶん太りそうで怖い。

午前中から志摩歴史資料館で行われる蝶と蛾の展示の搬出作業を行った。先方の3名のか、矢田先生とボランティアの宮さんにお手伝いいただいて助かった。

それから本の校正作業・・・。細かい訂正はキリがないので、やめることにする。大手出版社なので校閲部の赤が入っていることもあり(事前に本郷さんに見ていただいたので、ほとんど訂正はなかった)、あとは好みの問題かもしれない。

そのほか、午後に会議があった。箱崎キャンパスの一部が移転に伴い、年末に更地になることになり、その予定地にある収蔵物の移動先に関するものである。しばらくは残る歴史的な建物の一部に移すことになっており、年末には少し慌ただしくなりそうだ。

 

谿間にて

昨日の夕方から、チェンライの山奥に入った。

昼ごろにドイステープを下り、市内でおろしてもらい、そこでタクシーに乗り換え、チェンライの小学校の駐車場へ。そこで採集人の方のハイラックスに乗り換えて、1時間弱、ものすごい山奥の谷間の村に到着した。

国立公園のなかにある非保護区で、見渡す限り森におおわれている。

早速、小松君と歩くが、時期と天気が悪いせいで、ほとんど虫が見つからない。キノコシロアリの菌園を掘りだしても、ほとんど共生者がいなかった。この時点で、2人とも成果は見込めないだろうと見限った。

前回と今回の旅行で強く実感したのだが、インドシナでは(少なくともタイでは)、小甲虫類を中心とした「雑多な虫」の大半は4月から5月が良い。ツノゼミは乾季に限る。採集人の方も、この時期になるともう虫がいないとおっしゃっていた。

夜は土砂降りのなかベランダで水銀灯を焚いてくれた。さすが見渡す限りの森だけのことはあって、悪条件のなか、多数の蛾が飛来した。

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朝から豪華な料理をいただき、9時過ぎに森に向かう。恐ろしい悪路を車で進む。雨になると帰れなくなるとのことで、採集人の方は車を家に戻しに行ってしまった。

その間、息子のボン君が案内してくれた。

小松君がアオハブを見つける。どこの国へ行っても、山に暮らす人々は非常に毒ヘビを恐れる。ここも例外ではなく、撮影中もボン君が石をぶつけようとしており、制止するのに苦労した。戻って来たお父さんにも、近づいちゃダメだと注意された。

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昨晩、このあたりにいる虫の標本をいくつか見せてもらい、今日の目的をビワハゴロモに定めた。昔から憧れていたPyrops clavatusがたくさんおり、素晴らしい光景だった。

昨晩飲んだお茶のせいで一睡もできなかった小松君も、喜んで撮影していた。

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これは私が撮影した写真。

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小雨になったり少し晴れたり、落ち着かない天気だった。とにかく素晴らしい場所。(たぶん、遠くの深い森は国立公園内だろう。)ボン君と。

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もうすぐ帰国

今日で調査は最後。今晩、いくつか追加採集をして終わり。明日、FITを回収して、早々に町に戻り、明日は別の場所に1泊だけする。

成果は目標の2割といったところ。今日、ようやくヒメサスライアリが見つかったが、引っ越しは見られなかった。しかし、小松君とペイちゃんのおかげで、数種のハネカクシと寄主の新しい関係がわかったのは収穫だった。古い標本やトラップ採集で得られた「形態から好蟻性には違いないけど生態不明のハネカクシ」の生態ははっきりするのは、なんとも興奮するものだ。

昨日、ちょこっと寄った場所が乾燥したフタバガキ林で、雨で1時間もいられなかたっが、いくつか今回の調査の新顔が見つかった。

アオバナテングビワハゴロモPyrops viridirostris。かわいい。

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タマヤスデを襲うハシリハリアリの一種Leptogenys sp.。青くて美しい種。この後、解体するわけでもなく、重そうに巣に運んで行った。

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アリネジレバネの雌。雄はアリに寄生するが、雌はバッタ目に寄生する。中瀬博士にお土産。

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