断虫亭日乗

過ぎ去る日々の思い出をつづるだけ

研究

微小甲虫とアリの電顕撮影手順(菅谷式を改良) <標本下ごしらえ> 10%水酸化カリウム(60℃ 1時間)*体表に付着したたんぱく質の除去と筋肉の軟化。 10%エタノールで洗浄(軽く2回流す)*洗わないと、乳酸と反応してしまう。 乳酸(60℃ 1時間)*体表の…

再びノミバエだが、蓄積した材料をこんどDisney氏に見ていただくことになった。写真は3年前にマレーシアでサスライアリから採集したもの。 ノミバエといえば、1995年前のNatureに出た論文は衝撃である。好蟻性で脚のないノミバエの発見。場所はマレーシアのU…

初めて電顕を使わせていただく。Zeissの新しい大型器で、たくさんの機能がついているが、それでいて扱いやすいものだった。画像も高解像度で、かなり引き伸ばしても問題なさそうなくらい。来週の火曜に本番開始。それにしてもZeissの電顕は知らなかった。 今…

Steiner夫妻が編集をしているMyrmecologische Nachrichten(Myrmecological News)の最新号が出た。Editorial boardは一流揃いだし、出ている論文も面白いものが多い。これから火がつく雑誌のような気がします。http://www.oegef.at/myrmekologische.htmlhtt…

もうすでに某所で紹介されているが、Entomologische Abhandlungenが生まれ変わった。無料DL可能。昆虫の高次関係に関する論文目白押し。http://www.arthropod-systematics.de/

Tree of Life DNA projectの「Instructions for preserving and handling DNA specimens」http://btol.tolweb.org/SpecimenPreservationInstructions なかなか良いマニュアルだと思う。ただし、自分のやっている好蟻性昆虫では、1日頑張って1頭ということも…

今日はKistner氏の文献コピーなど。同氏はいわずと知れた現代の好蟻性昆虫・好白蟻性昆虫の大家で、カリフォルニア州立大学の名誉教授である。1975年以降、彼の論文はほとんどすべて、自分で作った雑誌Sociobiology氏に掲載しているが、それ以前はさまざまな…

そして解剖だが、細かい部分は封入剤の一種であるユーパラル中で行うのがいちばんよい。グリセリン中でも可能だが、難しい。どうしてもグリセリン保存したいときには、先にユーパラル中で解剖し、その後アルコール洗浄し、グリセリンに移したほうがよい。な…

合間を縫って、試行錯誤でアリの口器のプレパラートを作成しているが、ようやく軌道に乗った。ケアリでは口器が一番多くの形質を拾えそうだ。アリの形態学にいまや電顕写真は欠かせないが、口器に関しては、口腔内が見えず、節がわからないことから、電顕は…

オオチャイロハナムグリという素敵な甲虫がいる。属名をOsmodermaといい、この属をタイプとし、オオチャイロハナムグリ族Osmoderminiという高次分類群がある。このOsmodermaは、ギリシャ語由来の「osmo+derma=匂いのある皮膚」という意味で、文字通り、この…

ケアリの形態観察用のサンプルを集めていたが、Phil Ward氏の紹介で、Gary Murphy氏が大量のアメリカのケアリのDNAサンプルを送ってくれるという。しかしもうDNA実験はしない予定…。北米の材料は貧弱だったので、もっと早く連絡すればよかったと深く後悔する…

8月のアリ研のプログラムが来た。以下の通り: 8月26日(土)講演プログラム 時間 発表者 演題 萩原 康夫 ミヤマシジミの羽化戦術-どうしてアリに襲われないのか?恒岡 洋右 サムライアリコロニーの奴隷クロヤマアリはなぜサムライアリに利他行動を行うか小…

久しぶりにマイクロサテライトの実験。今日はChelexでDNA抽出をし、その濃度を測ってみた。まずは抽出方法(濱口さんに教わった)は以下のとおり。 純水に5-6%のChelexを混ぜ、オートクレーブ。 1.5mlチューブでクサアリの脚1本をすりつぶす。 200μlのChele…

昨日の朝、近所の駅へ向かう途中に近所の公園でカワラケアリLasius sakagamiiが土を巣から運び出していた。たぶん、ここ数日の雨で巣穴は埋まってしまったので、それを掘り出すためのものだろう。羽アリの穴ということも考えられるが、穴は大きくなかった。…

アリヅカコオロギの撮影のついでに、以前から検討したかったアリの標本も見てみた。手始めにアリ類データベースでは「働きアリでは区別がつかない」と書いてあるアメイロケアリとヒゲナガアメイロケアリを比較してみたところ、いくつかの決定的な違いが見つ…

濱口さんと研究の相談をしたが、一つ調べなければいけないことがある。超多回交尾のアリの雌の受精嚢から、精子を取り出し、そこにどれくらいの種類の対立遺伝子があるのか調べたいのだが、なにか良い方法はあるだろうか。マイクロサテライトを使う予定。 ク…

Steiner夫妻からケアリ属の系統樹が来た。やっぱりCO1はダメ。根元が飽和している。それで次はCO1+16Sでいくことになった。本当は16S+12Sでやったほうがいいかもしれないが、もうお金が・・・。60サンプルなんですけどね。それにしても今回の結果は過去のケ…

昨日のアリの系統の補足。亜科間の解像度が低いが、これはミトコン情報による分子系統の限界のようにも思える。アリというグループが、生まれてすぐに一斉に放散したのであれば、基部の分岐が浅くなってしまう、つまり解像度が低くなってしまうことはやむを…

例によって今更ながら少し前の論文を読んでみた。春にScienceに出たアリの大系統の論文。http://www.oeb.harvard.edu/faculty/pierce/people/saux/saux.html(から行ける)Corrie S. Moreau, Charles D. Bell, Roger Vila, S. Bruce Archibald, Naomi E. Pie…

ケアリの論文を書くにあたり、いくつか必要な材料があるが、どうしても手に入らないものがあった。それは新北区(カナダと北米のあたり)に固有のグループで、カナダの知り合いを通じて各地にwantedしていた。今日、ようやく色よい返事が得られ、やった!と…

今日は久々にじっくりと虫を見る時間を作り、例の怪しいケアリを形態からも他種と区別できるかどうかを観察して調べた。他種と比較しつつ、3時間じっくり観察した結果、ようやく容易に識別できる形質を見つけた。 ケアリというのは、同所的に複数種が生息す…

Seifert氏のメールが来た(わざわざ英語で・・・)。自分でもここ数ヶ月、雑種検定の方法についていろいろと調べ、周囲にも聞いてみたが、以下Seifert氏が述べるように、「核DNAを用いても、確実な検定方法はない」というのを一般的な認識としても間違いないよ…

昨日のAenictusのPCRは不成功だった。やっぱり標本が痛んでいたようだ。採りなおす必要があるが、今回の論文では見送るしかないかもしれない。 そのあと、ケアリ30個体のPCRをしたが、実験中にネットサーフィンしていたら、なんと同じような研究をしているア…

次号の「蟻」の原稿を少し進めている。アシナガキアリAnoplolepis gracilipesの分布に関する考察である。このアリはアジアの熱帯に広く分布し、乾燥した林や市街地では最優占種の一つとなっている。また、各地に移入され、場所によっては、その地の在来生物…

「National Science Museum Monographs No. 32, REVISION OF THE PALEARCTIC SPECIES OF THE MYRMECOPHILOUS GENUS PELLA (COLEOPTERA, STAPHYLINIDAE, ALEOCHARINAE)」の原稿をようやく来週の月曜に入稿することになった。早ければ2月末には世に出るかもし…

今日は久しぶりに虫の標本をさわることができた。正月に自宅で研究するための準備でもある。京大の松本さんがランビルでヒメサスライアリから採集された好蟻性ハネカクシをまとめる予定で、追加で送っていただいた液浸の乾燥標本作りを行った。うーん、楽し…

編集をしていて悩むこととして、論文の文献引用のレイアウトが難しい。とくに本の引用が難しい。 まず、書名を一通りイタリックにしているのは間違いである。イタリックの意味としては、シリーズものであるということと、著者が分担執筆者の一人であるという…

サッポロの吉富さんからアリヅカウンカという昆虫を大量に送ってもらった。アリヅカウンカ科に属し、科レベルでアリとの共生関係が知られるが、日本産種については何も生態がわかっていない。おそらく、幼虫がアリの巣の中で植物の根の汁を吸うのだろうが、…

「蟻」の編集の最終チェックと、出版論文(Pella属の論文で、科博のモノグラフシリーズに出版予定)の手直しをした。この論文の出版ページ数は300を超えそうなくらいあるので、見直すのも一苦労。これから年明け早々の出版に向け、見直しの繰り返しが続く。 …

午後からは標本返送の続き。データを打ち込みながら同定ラベルを付け、ピンで固定する。今日はウィーン自然史博への荷造りだった。