断虫亭日乗

過ぎ去る日々の思い出をつづるだけ

ヴィ〜ナス

すごい新種の発見。

昨年夏に「ダーウィンが来た」の取材でカンボジアに行った際、毎日の昼休みに茶坊主こと柿添翔太郎君と採集した。撮影中は彼は独りで採集していた。

ある日、こちらが取材しているとき、彼から電話で「すごいものを見つけてしまいました」と震えた声で報告があった。わざわざ電話するなという声を呑み込んでその内容を尋ねると、「まさか」としか思えないものだった。

ホテルで落ち合い、実物を見たときには、驚きと悔しさのあまり色を失った。数年前に私が同じ場所で同属の新種、Termitotrox cupidoを発見し、世界最小のコガネムシとしてちょっとした話題になったのだが、本種はより大型で非常にかっこいい。しかも茶坊主は、私が散々調べたシロアリの巣で、私の不注意で見過ごしていた微環境で発見していた。完敗というほかなかった。

cupido同所的(シロアリ寄主は異なる)に見つかったので、古来よりクピド(キューピッド)一緒に描かれることが多いウェヌス(ヴィーナス)の存在を思いつき、本種にはvenusと命名した次第である。

雑誌のプレスリリース: http://www.eurekalert.org/pub_releases/2015-07/pp-lca071515.php

原著論文: http://zookeys.pensoft.net/articles.php?id=5672