断虫亭日乗

過ぎ去る日々の思い出をつづるだけ

今日も絵描き

今日も絵描きの続き。いい加減疲れてきた。昆虫画家の川島さんは絵を描いているうちに恍惚となるというようなことをおっしゃっていたが、こちらはまだそのような境地には達していない。むしろ苦痛が伴う。しかし、絵を描いているうちに気づくことも多く、絵描きの過程で様々な情報が得られることに関しては少なからず快感を覚える。

昨日、雄の精巣の写真を共同研究者のSteiner夫妻に送ったが、今日の帰り際にコメントが帰ってきた。なんと、その写真をアリの解剖学の大家であるBuschingerに送ったようで、彼のコメントも転送されてきた。その内容は意外なもので、こちらの送った写真の精巣がまだ成熟していないというものであった。そんな馬鹿な。送った写真は少なくとも交尾直前のものであったし、腹部を押すだけで精包が飛び出てくるくらいなので、状況証拠からして成熟しているに決まっている。たしかに、一般にアリの精巣の成熟過程では、精巣が大きく発達したのち、精巣内からseminal vesicleに精包が降りてきて、初めて成熟する。しかし、クサアリ類では、その巨大な精巣に比べてseminal vesicleは貧弱であり、精巣内の内容物をすべてseminal vesicleに収めることは到底できない。おそらく、クサアリ類の場合、普通のアリより格段に精巣が巨大であることから、例外的に精巣内から直接精包を排出するのだろう。明日、反論を送らなければならないが、生きたものを解剖してもらわないと、なかなか受けれてもらえないかもしれない。