断虫亭日乗

過ぎ去る日々の思い出をつづるだけ

「動物地理の自然史―分布と多様性の進化学:増田隆一 (編集), 阿部 永 (編集)」(北海道大学図書刊行会)

ここ数週間、行き帰りの電車の中で読んでいた。現在の日本の脊椎動物の動物地理の集大成といった内容で、非常に充実しており、学ぶところが多かった。脊椎動物を対象としているが、昆虫にも適用できそうな例がいくつも見つかったのも収穫だった。やはり、分類があるていど進んでいると、その先の研究が格段に進歩する。植物の研究はもちろん、脊椎動物の研究はそのことを端的に示している。昆虫の場合、種の多様性が明らかになっていない分類群が多く、動物地理の研究において他種との競合や分布論を考えるときに、そのことが足枷になっているケースが多い。この本により、そういった問題を改めて考える機会ともなった。

一般的に面白い本だとおもっていたら、他の学生に聞くとそうでもないらしい。まず、各種の対象生物のイメージや動物地理区、日本の細かな地理(とくに島の配置)、日本の生物地理に関する一般的な問題の予備知識がないと、かなりチンプンカンプンな本のようだ。そういう意味で、かなり「マニアック」な本なのかもしれない。