断虫亭日乗

過ぎ去る日々の思い出をつづるだけ

今日は学会前の採集である。朝の9時半にロスリーさんからホテルに電話があり、10時に来てくださった。今回の学会を仕切られているのに、こちらの採集のアレンジまでしていただいて、大変恐縮してしまう。タクシーを2台呼び、ロスリーさんがその運転手に場所を教え、途中で買い物をし、マラヤ大学の研究施設があるUlu Gombakへは昼ごろになんとかたどり着いた。

着くと、山根さんや大城戸さん、江口さんをはじめ、何人かの蟻屋さんがすでに採集に来ていた。こちらも早速採集の準備。まずは40基のFITを仕掛けなければならない。本体を組み立て、受け皿に入れる10%酢酸と洗剤を入れた保存液を作る。たまたま大きな空タンクが施設に置いてあり、それを利用することができた。みなさん珍しがり、最初のいくつかのFITは、数人の見守るなか仕掛けた。40基を一人で仕掛けるのは結構大変で、早速疲れてしまった。

そういえば、今回は4リットルの酢酸を日本から持ってきたが、空港の検査で何も言われなかった。少し検査が甘くなったのだろうか。

もう雨季のはじまりで、林床はかなり湿っており、あちこちキノコだらけである。

小松君は初めての熱帯で何もかもが新鮮らしく、写真の撮影に夢中になっている。ハリナシバチの巣を案内すると、そこに1時間近く座り込んでいた。

次にサスライアリを採集するためのトラップを仕掛ける。網のかごを地面に埋め、そこにヤシ油を垂らすという単純なものだが、このかごを地面に埋めるのが結構な重労働である。

トラップ設置後は、Crematogaster inflataというアリの巣を皆さんに案内する。このアリは有毒(不味)で見事な黄色と黒の警戒色を持つが、なぜかその巣のそばに、そっくりな色彩をしている無毒なオオアリの一種が住んでいる。このような“共生”関係は非常に珍しく、ごく最近、香川の伊藤さんによって発表されたものである。ついでに、これにそっくりなハネカクシもいて、それは私が記載した。

その夜はラーメンを肴に酒を飲み、昨夜同様いろいろな話で盛り上がるが、こちらは途中で失礼し、早々に寝てしまった。