断虫亭日乗

過ぎ去る日々の思い出をつづるだけ

明日朝の便で帰るので、今日の夜に大学の宿泊所に戻る。今日は気合をいれていろいろと頑張らなくてはいけなかった。

昨日見つけた施設前の倒木を調べた。まずは地上6メートルに相当するあたりに、大きなオオアリの巣とシリアゲアリの巣がある。この二者は同じ場所に巣を作る習性があるようだ。オオアリは、やや連続的ではあるが、4つ以上の多型がある〈写真)。大きな職アリは2センチ近くあり、腹部がオレンジ色。その次に大きな職アリは頭部と胸部が赤、それより小さな職アリは全身黒色である。最小個体は5ミリほど。どれも非常に凶暴で、大きな個体に数箇所を噛まれて出血した。山根さんに種名を聞くと、非常に珍しい種で、初めて採集するそうである。やはり樹上は別世界なのである。この倒木からは、ほかにも4種のアリが採れし、アリヅカコオロギも採れた。さらに、細石君が欲しがっていたマレー産のシリアゲアリの一種であるCrematogaster difformisの雌が採れたのも収穫だった。

また、オーストリアのSchteiner夫妻にシワアリの標本を頼まれていたが、江口さんや田中君のご協力で数種が集まったのは助かった。

その後はあまりめぼしい虫が見つからず、FITを回収していたら夕方になってしまった。雨が多かったが、それでもかなりの虫が入っていた。おそらくハネカクシだけで1万頭は軽く採れたであろう。この季節に仕掛けたことはなかったが、なかには見るからに初めてのものもあり、熱帯でも季節が違えば採れるものが違うと再確認した。とくに、いままで数頭しか採集していなかったLarhodius maruyamaiという好蟻性のコガネムシが複数採れたのは嬉しかった。たまたま見回ったときに生きた個体が落ちていて、擬似生態写真を撮影することもできた。

ゆっくりとFITの回収をしていたら夕方になってしまった。施設に戻ると江口さんと田中君がハリセンボンアリEchinopla sp.の巣を見つけて解体していた。その名のとおり、全身がトゲトゲのアリである。通常は一個体が草の上などで見つかるだけなので、コロニーが採れるのは珍しいそうだ。

夕飯はバーベキューで、魚(サバヒー)や鶏肉にカレーをかけてホイル焼きにしたものが出た。山内先生にケアリのことをいろいろと伺う。

21時過ぎに迎えのバスが来て、大学の宿泊所へ戻る。皆さんと握手をしてお別れ。終始和気藹々として、実に楽しい会だっただけに、とても名残惜しく感じた。日本人は私のほかに、川口先生、久保木さん、細石君、田中君、小松君が帰る組である。

2台に便乗し、帰りは中華料理屋に寄ってもらい、ビールを購入。大学に着いたら、同じことを考えていた久保木さんもビールを買っていた。0時過ぎまで川口先生と久保木さんの部屋でビールを飲んだ。