断虫亭日乗

過ぎ去る日々の思い出をつづるだけ

次号の「蟻」の原稿を少し進めている。アシナガキアリAnoplolepis gracilipesの分布に関する考察である。このアリはアジアの熱帯に広く分布し、乾燥した林や市街地では最優占種の一つとなっている。また、各地に移入され、場所によっては、その地の在来生物相に重大な影響を与えているという。日本では沖縄県に分布しており、古い時代の移入種ということになっている。

また現在、このアリは「特定外来種被害防止法」に指定されるか否かという渦中にある。指定にあたって、アリ研究者に意見を聞くと、人によって意見の違いがあるようで、そこが問題となっている。この画期的な法の今後の動向を考慮すると、個人的には、移入種であれば指定しておいたに越したことではないと思うが、一部の研究者はそうやすやすとは納得しないらしい。

その前にこのアリが本当に移入種であるかどうかという問題が実はある。個人的にはまだ検討の余地が大きいものと思っている。なぜならば、いくつかの好蟻性昆虫が沖縄でこのアリと共生していて、しかも地域によって多少ともその種構成が違う。となると…。

しかしこのアリ、万が一、小笠原などに移入されてしまったら、大変なことになる。小笠原の大部分は乾性低木林で、このような環境は、アシナガキアリが最も好みそうな印象がある。ただでさえアノールトカゲで瀕死の小笠原に、もしこのアリが入ってしまったら、島によっては昆虫相が壊滅するであろう。他の日本在来種にも国内での移動が問題を引き起こしそうなものは多数いるが、特定外来種被害防止法の次は、国内の生物に関する移動等を制限する法律をも作るべきではないかと思う。南北に広く、国内で様々に地理的に分化した生物も多く、その必要性は自明である。そこで改めてアシナガキアリを指定できればよいが、いったいどれくらい時間がかかることか。

↓どんどん上がってます。応援ありがとうございます。

人気blogランキングへ