断虫亭日乗

過ぎ去る日々の思い出をつづるだけ

今日と明日は許可手続きの日。インドネシアは調査許可取得が煩雑で、事前の多数の申請書類提出に加え、入国後の調査の前に役所をまわらなくてはいけない。朝の7時に植物園を出て、ジャカルタにあるLIPIという機関と、警察に書類を提出する。LIPIというのは、日本の科学技術庁と文部省を足して2で割ったようなところで、ハルティニさんのいるボゴール動物学博物館(Museum Zoologicum Bogoriense)もここの管轄である。

そうこうしているうちに昼となり、インドネシア料理の食堂で、ジャックフルーツを煮たもの、納豆と脂身を揚げたものを煮たもの、鶏肉などが乗ったご飯を食べた。

昼過ぎに学博物館へ行き、偉い人に挨拶。その後、植物園に戻り、FITを設置したり、採集したりした。うれしかったのはミツバアリAcropygaの一種で、一緒にアリノタカラカイガラムシも見つかった。アリノタカラカイガラムシとミツバアリというのは、絶対的な共生関係にある。ミツバアリはカイガラムシを地中の巣で保育し、カイガラムシはミツバアリはそれを主要な餌となる蜜を出す。ミツバアリの雌の羽蟻は飛び立つ際、一匹のアリノタカラカイガラムシを咥え、巣を創設する場所で新たな共同生活を始める。この蟻はケアリの分子系統の外群にも使えそうだ。

一休みするために部屋に戻ったら、さっき掘っていたアギトアリの一種Odontomachus sp.の巣のそばに手鍬を忘れたことを思い出した。忘れてから1時間近く経っており、戻ってみたら、やはり無くなっていた。大事な採集道具だっただけに、残念だった。

夕飯は、植物園に一ヶ月以上生活しているという北大の松林君の案内で、近くの食堂で焼きそばを食べた。一緒に注文したメロンジュースは、生のメロンをミキサーにかけたもので、とても贅沢な品だが、練乳やシナモンが入っていて、メロンの味は希薄だった。その後、近くのスーパーマーケットで採集道具の買出しなどをし、宿舎に戻る。

澤田さんが良い倒木を見つけたというので、21時過ぎからカメラを持って虫の撮影。ゴミムシやゴミムシダマシ、ゾウムシなどを撮影した。帰り際、木の幹にトッケイヤモリという30センチ近い大型のヤモリが止まっているのを見つけ、撮影後に捕まえた。ところが、捕まえたとたんに指を噛み付かれてしまった。これが大変強力で、しかもどんどんと深く噛み付いてくる。ぶら下げたら、ようやく離れてくれたが、痛いし、血が出そうだった。今晩は宿舎に住み着いているトッケイヤモリGecko geckoが、よりによって自分の部屋の壁で「トッケイ、トッケイ」と大声で鳴いている。夜中に起こされそうだ。

写真はテーブルの上で怒りまくるトッケイヤモリ。