断虫亭日乗

過ぎ去る日々の思い出をつづるだけ

週刊文春をたまに買うが、高島俊男の「お言葉ですが」という言語学に関するエッセイがいつも楽しみで、目から鱗が落ちることがしばしばである。今週は戦中に使われていた「蘭印」に関する考察だった。「オランダ領インドネシア(=ほぼ現在のインドネシア)」の略であるが、当時は何の略であるか知らない人が多く、「オランダ領インドシナ」と思っている人もいたようだ。当時は「フランス領インドシナ仏印)」があったので、それに対抗するものだと思われたのだろうか。また、オランダ領インドネシアを「蘭領東印」、つまり「オランダ領東インド」ということもあったようだ。

これを読んでいるうちに、以前に論文を書いているときに迷ったことを思い出した。ある種の分布記録を論文から拾っているとき、戦前のドイツ語の論文に「Ostindien」と書いてあった。なんだかインドとは区別しているような雰囲気だったが、結局意味がわからず、「東部インド」と解釈し、インドとして引用したと思う。今思えば、これはインドネシアのことだったのではないか。しかし、当時の「蘭印」は英語では「East Indies」だったようで、ドイツ語では「Ostinseln」だったようだ。やっぱり「Ostindien」は普通に「東部インド」でよかったのだろうか…。

このエッセイにもそれに関する注意書きがあって、「東インド」にはインドからその東の東南アジア一帯を含めた意味合いもあったらしい。しかし、戦前とはいえ、論文上でそのような曖昧な意味を採用するとは思えず、やっぱり真相はわからない。

なにかご存知の方、教えてください。