断虫亭日乗

過ぎ去る日々の思い出をつづるだけ

今日は久しぶりに実験室のミーティングに参加した。早めに着いたので、自分の部屋にいってコーヒーを飲んで、9時ちょうどに実験室に着いたら、すでに掃除が終わっていた…。

山田研の人たちがインドネシアの調査から戻ってきた。各博物館の標本調査ののち、フローレス沖の洋上で調査をしたそうで、みなさん真っ黒に焼けていた。お土産にトラジャコーヒーを頂く。

今日は溜まっていたメールを返信をはかどらせ、夕方近くから実験室へ。まずはハネカクシ16種のDNA抽出。標本に切れ目を入れ、バッファーとプロKを混ぜた液に漬けるだけ。これで2晩55℃に置いて、液からDNAを抽出する。外骨格は無傷のまま証拠標本に出来る。

また、放置していたケアリの16Sの配列決定を行った。人のDNAも増えてしまうプライマーなので、注意しないといけないが、AT含量によって昆虫か否か想像がつく。どうやら人間ではないようだが、別種で同じ配列のものがあり、体表のダニなどを拾ってしまったものがある感じがした。いくつかのデータは捨てるしかないだろう。

帰ったら大量のメールが来ていた。ドイツ昆虫学研究所のZerche氏から長いメール。アリヅカハネカクシThiasophilaの東部旧北区産種を一緒にまとめる計画があるが、お互いの都合で遅々として進まなかった。それもようやく着手できそうな見込み。彼は10年以上前に西部旧北区の種をまとめているが、当初の予想よりも実際は寄主のアリごとに細かく種分化しているようで、こちらの再検討の必要もあるそうだ。東部旧北区産種はMaruyama & Zerche、西部旧北区産種はZercheで書く予定だが、ドイツ周辺で追加材料を採集した後、同時に着手したいらしい。ドイツの好蟻性昆虫採集の適期は4月中旬から下旬のようだが、今年はヨーロッパの春が異常に遅く、今朝起きたらマイナス8℃だったとのこと。場所はベルリン郊外のMünchebergだが、Steiner夫妻も同じようなことを言っていたので、中部ヨーロッパはどこもそうなのだろう。こちらも春までにThiasophilaの原稿を用意しなくては。Zerche氏の過去のまとめはそれでも完成度が高いので、フォーマットをそれにあわせるつもりだが、なにぶんドイツ語なので、それを英訳してから取り組まなくてはならない。

北京の中国科学院の周紅章氏(Zhou Hongzhang)からメールが来て、5月に来ていいよとのこと。北京市の長城沿いの小龍門(Xiaolongmen)という採集地に宿泊施設があり、多くの研究者が利用している。たぶん、5月下旬に4日程度北京に行くことになるだろう。

ときを同じくして、毎年中国で調査しているイギリスの友人から、様々な採集経験談と中国人の研究に関する長いメールが2通にわたってきた。より合理的に、より安く、自らの調査を進める方法がわかり、大変参考になった。まあ、今回の北京行きには関係のない話しだが。それにしても、日本の金持ち虫屋が現地の研究者に何百万も支払って採集している話しを彼にしたら、きっと失笑を買うだろう。

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