断虫亭日乗

過ぎ去る日々の思い出をつづるだけ

合間を縫って、試行錯誤でアリの口器のプレパラートを作成しているが、ようやく軌道に乗った。ケアリでは口器が一番多くの形質を拾えそうだ。アリの形態学にいまや電顕写真は欠かせないが、口器に関しては、口腔内が見えず、節がわからないことから、電顕は完全に不可である。以下、薬品処理法の仮マニュアル。基本は北大式(高木式)だが、脱色等の工夫が少しある。甲虫等でもだいたい同じ方法が使えると思う。

クロクサアリ程度のもの:
1.微細な針で腹部に穴をあける。これ重要。大型種では頭部と胸部にも空けたほうがよい。
2.5%KOH (60℃ 2-3hr)
3. 30% Ethanol (RT 10min)
4. DW (RT 10min)
5. 1% Hydrogen peroxide (RT 1-10min)
6. 30% Ethanol (RT 10min)
7. DW (RT 10min)
8. Lactic acid 95% + Acid Fuchsine 5% (60℃ 1hr)
9. 30% Ethanol (RT 10min)
10. 80% Ethanol (RT 10min)
11. 99% Ethanol (RT 10min)

各効果・意味:
1.体内に薬品が容易に染み渡るように;2.タンパク除去;3.4.洗浄;5.脱色;6.7.洗浄;8.染色・脂肪除去;9.-11.洗浄・脱水。

注意点:
時間は標本の状態や大きさによって調整する。これ以上は手順を短縮できそうもないが、脱色後の洗浄はもう少し適当でよいかもしれない。小型種の場合は全身をプレパラートにする(口器と本体はカバーガラスを別にする。つまり1枚のガラスに2箇所封入する)。大型種は口器のみプレパラートにし、本体はグリセリン中で保存する。大型種でも染色は必須。Hypopharynxは染色しないとよく見えない。脱水のあとは、キシレンにつけてバルサムか、そのままEuparalに封入すればよい。重要な点はKOH処理を高温で行わないこと。染色後にサリチル酸メチルを通すことによって、外骨格を硬化させる効果があるが、臭いが強烈な薬品なので、試していない。解剖前に多少とも硬くするのは良いかもしれない。

硬化の弱いものや微小種(要は脱色が不要):
1.微細な針で腹部に穴をあける。
2.5%KOH (RT 1day)
3. 30% Ethanol (RT 10min)
4. DW (RT 10min)
5. Lactic acid 90% + Acid Fuchsine 10% (60℃ 1hr)
6. 30% Ethanol (RT 10min)
7. 80% Ethanol (RT 10min)
8. 99% Ethanol (RT 10min)