断虫亭日乗

過ぎ去る日々の思い出をつづるだけ

Biology of Anomura II」を頂戴する。国際甲殻類学会の異尾類シンポのProcである。Anomuraとは異尾下目(ヤドカリ下目)のことで、ヤドカリ、タラバガニ、アナジャコ、カニダマシなどを含む。中央博の朝倉さんを編集長として出版されたもので、Procながら大変レベルが高く、勉強になる。また体裁も美しい。朝倉さんは動物分類学会和文誌「タクサ」の編集長でもあり、このProcの編集に忙しい時期には私が「タクサ」の編集長代理を勤めた。そのお礼ということだろう。

論文に使うシーケンスをDDBJに登録しようと、下準備をした。ついでにいくつか登録したが、結構面倒なシステムだ。作って管理するほうは大変だろうが、もうちょっと便利な入力形式はないものか。本格的に登録するときには一日仕事になりそうな気がする。

ちかごろ聖典と化しているE.O.Wilson(1955)のケアリのモノグラフをめくっていたら、謝辞に岡本半次郎の名があって少し驚いた。岡本は松村松年の弟子の一人で、戦前から戦中にかけて朝鮮総督府に勤めたのち、北海道農試で定年を迎えたと記憶している。調べたところ亡くなったのは1960年なので、その5年より少し前にWilsonにケアリの材料を融通したようだ。このモノグラフには蟻研会長の久保田先生の材料も使われている。そのことついては、インセクタリュムの蟻特集の巻頭のエッセイで久保田先生が、当時のWisonの指導者であったBrown博士の頼まれて用意したと書いていたと思う。時代は移っても脈々と人はつながっており、50年以上前の論文にさえ、なにか身近な人が書いた手紙のような親近感を覚える。

写真はチェンマイのDoi Suthepにある少数民族の村。観光地となってはいるが、路地裏にはまだ垢抜けない風景が広がっている。2003年5月17日

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