断虫亭日乗

過ぎ去る日々の思い出をつづるだけ

今日は毎週恒例の採集へ。最初はいつものPalos Forest Reserveへ行く予定だったのだが、キノコ研究者のケンタロー夫妻がインディアナ州北部(シカゴの少し南)のほうへ電車で行くというので、それについていくことにした。朝の8:06にタロー君とともにRoosevelt Road駅からSouth Shore Lineという超ローカル線に乗り、途中の駅でケンタロー夫妻と合流、9:17にDune Park駅に着いた。シカゴの予報では晴れだったのだが、電車で1時間も南下すると気候が変わるようで、着いたときには霧雨だった。駅の待合室でコーラを飲んで雨の様子を見、10時過ぎに森へ向かって歩き出す。

駅を出てすぐ、とても良い森が広がっていることに驚く。Palos Forest Reserveも悪くない思っていたが、それよりもずっと植生が豊かで、森が湿っている。わすか20kmほど南下しただけだが、暖かさがかなり違うのだろう。また冬場にはシカゴよりずっと雪が多いことが、森の湿り気に関係しているのかもしれない。森へ着いて早々、湿った落ち葉の下に足の短いサンショウウオPlethodon cinereusをみかけた。

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行きがけの車窓からも気になっていたのだが、開けたところにはMilkweed(Asclepias syriaca)というガガイモ科の植物が多い。これは渡りをする蝶として有名なオオカバマダラの食草で、よくみると幼虫がいるのが見みつかる。また、この植物を食べるカミキリムシの一種Tetraopes tetrophthalmusもいる。毒草ながら花はたいへんい芳しく、ハナカミキリやハナノミも多く集まっていた。

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森の奥へ進む途中、ノバラにハナカミキリの一種Strangalia luteicornisを見つけた。林内は暗い場所が多く、花が少ない。

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また森全体が巨大な砂丘の上にあるため、歩道は完全な砂地である。海岸の砂地を歩く感覚と同じであり、わずかな上り坂にも疲れてしまう。昼に湖岸で合流の予定だったのだが、一足先についてしまったため、湖岸をうろつきまわる。波打つ青い水に見事な砂浜、これで松でも生えていればもう完全な海である。

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再び森の中に戻ると、立ち枯れに空いたうろからコガネムシの仲間の糞が落ちているのを見つけた。これはオオチャイロハナムグリに違いないと思い、うろに手をつっこんで土を掻き出すと、しばらくしたら昨年に発生した個体と思われる上翅が出てきた。横にやってきたタロー君は、「古いからもういませんよ」などと言っていたが、中の土を掻き出すこと数分、指先に硬いトゲトゲしたものが触れた。オオチャイロハナムグリの一種Osmoderma elemicolaである。成虫はまだ土繭のなかにおり、掘り進めると次々に出てくる。指先に成虫の感触が伝わる瞬間は実に気持ちが良い。

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横にいたタロー君が交代して欲しいと懇願するので、代わってあげた。

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昼食後、葉の上を見たり、朽木を起したりして歩く。驚いたのはクロツヤムシの一種Odontotaenius disjunctusがいたことである。存在は知っていたが、熱帯を代表する昆虫の一群であるクロツヤムシがまさかシカゴから電車で1時間の場所で見られるとは思わなかった。その他、ベニボタルの一種Calopteron reticulatumや、いつものツノゼミの仲間Ceresa sp.はアメリカらしい昆虫である。

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ブルーベリーやキイチゴをつまみながら16時ごろに森をあとにする。

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