断虫亭日乗

過ぎ去る日々の思い出をつづるだけ

昨年の10月にタイのカオヤイ国立公園(Khao Yai)でタイワンシロアリの一種Odontotermes sp.の塚を掘って、菌園から採集した好白蟻性ハネカクシDiscoxenus sp.。体長(前胸部前縁から腹端)は2.5mmほど。好白蟻性と好蟻性は、通常、全く起源が異なるが、同じ社会性昆虫との共生という点で、形態的な特殊化に類似傾向がある。こういう体型をカブトガニ型(limuloid)というが、特殊化の多少の差はあれ、好白蟻性のハネカクシと好蟻性のハネカクシの双方に普通に観察される。ただし、シロアリの関係するものは、シロアリの頭部の触感を「意識」しているようで、つるつるした表面構造のものが多い。一方、アリと関係するものは、毛深いものが多い。

ところで好白蟻性と好蟻性は全く起源が異なるといったが、なかには好白蟻性種と好蟻性種が非常に近縁な例もある。シロアリを捕食するアリと被食者のシロアリでそういった近縁な共生生物が発見される場合があり、おそらく捕食−被食の交流によって生じた現象である。そして最近、シロアリから見つかっていたものと形態的に全くの同種がアリからも発見された。もともと寄種の幅の広い好白蟻性種のハエが、シロアリ捕食者のアリから見つかったのである。次の機会にはDNAでも同種かどうか検証してみたいと思っている。
Scuttle Flies Associated with Old World Army Ants in Malaysia (Diptera: Phoridae; Hymenoptera, Formicidae, Dorylinae)
By Munetoshi Maruyama & R. Henry L. Disney.
Sociobiology: Volume 51, Number 1, 2008: 65-71