断虫亭日乗

過ぎ去る日々の思い出をつづるだけ

数年前にオオズアリの江口さんがベトナムで採集した新属新種(未記載属未記載種って言わないと叱られるかも)の好蟻性ハネカクシで、川島逸郎さんに全形を描いて頂いたまま放っておいたものがあった。1個体のみしか標本がなく、いつか追加個体を採集に行こうと思っており、それが記載論文の作成を逡巡させていた。しかしベトナムに行く機会は当分ありそうもないので、とりあえず1個体のみで記載することにした。DNAが取れる可能性を考えて、昨晩からProKに漬け、今日の夕方、標本本体を取り出してDNAを抽出し(取れているかは不明)、標本を解剖した。幸い、雄だった。
1個体で記載したことは何度かある。それについて昔、生態屋の先輩と朝まで不毛な議論をしたことがある。先輩は「20個体くらいなければだめだ。1個体だったら奇形かもしれないだろ」というご意見、それ対して私は「1個体でも明らかな新種は新種、そういうものもあるんです。微妙な新種だったら1個体では記載しません」という内容の返答。いかにもという意見の対立である。こんな話しになぜ朝までかかったのかは思い出せないが、異常に白熱した立ち話だったのを覚えている。しかしこういう不毛な議論、いや一見不毛だが実は不毛ではなかったかもしれない議論も大切だったかもしれないと思う。(「かもしれない」が多い。)
この秋のEsakiaで生物防除研の上野先生と一緒に記載する予定のアリノスハナムグリの標本を作製。100個体あまりをお湯に漬けて整脚、微調整を行った。なかなか面倒な作業だったが、標本交換の重要な武器となりそうで、誰と何と交換しようかという夢想が原動力となった。
某雑誌に出した論文、数日前に「あなた方の論文はほぼ受理段階で、今後雑誌の体裁に合っているかを確認して受理します」とのメールが来たと思ったら、いきなり初稿が来て、「これが最終段階の校正で、次からは直せません」とのこと。うーん。