断虫亭日乗

過ぎ去る日々の思い出をつづるだけ

展示室の空調が故障で停止していた。工営係りと話すが、お盆で多くの職員が不在で、電気業者も休業中だという。明日、電気に詳しい係長が見に来てくれることになった。展示室の温度は体温程度になっており、水槽の魚とゲンゴロウが心配だ。大講義室に付属した別室を丸々占める巨大が空調設備だが、なにしろ古く、不具合も多い。いまの時代だったら、大型冷暖房2台あれば十分だろう。
新属新種の絵10枚を一気に描き上げる。締め切りがあるので少しあわてている。それから千田君のハネカクシ研究指導。解剖(3mmのハネカクシの交尾器の摘出)がなかなか上手くいかず、「とりあえず普通種で練習してからにしよう」とやめてもらう。かなり落ち込んでしまったが、最初は上手くいかない人は少なくない。いや、最初から上手くいく人のほうが少ないだろう。微小な昆虫の解剖には、単純な力加減と対象の構造を理解した適切な道具の動かし方という、手と頭の両方を動かす器用さが要求される。器用不器用は解剖の技術にそのまま反映されると思うが、ある程度の作業が可能な器用さがあれば、訓練によってかなり改善されるはずである。私は最初からある程度できたほうで、それから10年以上続けているが、絵描きとともに今でも年々上手くなっていると感じる。その点、解剖に絵描きという分類の基本動作は、串打ち三年、裂き八年、焼き一生というような、腕前の先に終わりのない職人芸ともいえる。精進あるのみ。そういえば今朝、川でウナギを見た。