断虫亭日乗

過ぎ去る日々の思い出をつづるだけ

Imagine

今回、昆虫や系統の学生さんたちの研究を見て、分類でしっかりと研究を続けることの難しさを改めて感じた。いや、決して難しくはないのだが、材料選びから計画で負の連鎖に陥る人が少なくない。その前に「根性」というのが一つの重要な基盤になるのだが、それはどんな研究でも同じである。(この缺如によって研究が頓挫している学生のなんと多いこと。)
先週の松山のシンポジウムでも話したのだが、「分類が進んでいないから」という動機で研究を始めるのは最悪である。そんな理由で材料を勧める教官は前時代的といってよい。大学で研究するのなら、面白い話しにつながる材料を選ばなければならない。面白いというのはもちろん、専門外の研究者にも興味を惹くような内容である。「どんな生き物にも面白い話題はある」と主張する人がいるが、それはウソである。
今回私が滔々と話したのは、「君たちのやっていることが、学会発表で分類以外の人、昆虫専門外の人が聞いて面白いことが話せる材料であるか、計画であるか、想像してごらん」ということであった。分類の研究者の発表で、「XX属に何種いた」、「XXが○○で見つかった」、「XXと△△のどこがどう違う」という内容を中心とするのは最悪な例で、そんなものは最低限にとどめて、その意義の部分、またそこからはずれた+αの部分を前面に押し出すべきである。
分類そのものはもちろん大切で、時間をかけてやらなければならない仕事ではあるが、当該分類群の「多様性」を最も理解している分類研究者が、分類の研究だけにとどまるのでは、それこそ趣味になってしまわないか。また、+αの部分が分類の研究の質を上げ、研究に対する周辺領域の理解を得ることにつながると思う。これは職業研究者を目指す学生に向けた話しである。