断虫亭日乗

過ぎ去る日々の思い出をつづるだけ

目覚めてすぐに論文の原稿を書き始める。森の中の採集で創作意欲もわき、時間もあるという、こういう機会はなかなかない。部屋から出ると中瀬君が軒先の蛍光灯のトラップの仕分けをしていた。私は森に仕掛けた蛍光灯を取りに行く。オオキノコムシがかなりの数入っていた。雨後でキノコの虫が動き出したのだろうか。
朝食は麓の食堂へ。結局、毎食出向くことになったようだ。朝食はチャーハンとスープ。コテージへ戻るが、なかなか疲れが取れず、コーヒーを飲みながら標本の整理をする。それから昼食へ。鳥を辛くいためたものにソムタムを頼んだ。
昼食後、FITの続きを仕掛ける。良い場所が少なく、野村さん、中瀬君、私のが密集している状態となっている。如実に効果の違いがわかる、と言いたいところだが、どうも虫の数が少ない。違いが出るほど採れるかどう不安だ。
昨日仕掛けた中瀬君のFITに珍しいアリノスハナムグリが落ちていた。欲しいと申し伝えたら、「コーヒーが飲みたい」とおっしゃる。もちろん入れて差し上げた。
それから私はヒメサスライアリを探してひたすらに歩きまわる。滝の付近でハシリハリアリの巣を見つけ、翅のないノミバエを採集した程度。
夕方コテージへ戻ると、中瀬君がヒメサスライアリを見つけたという。早速その場所を案内してもらう。その前に、18時半を過ぎたら先に夕食に出かけていてくださいと伝えておいた。
すでに薄暗い森のなか、行列を見るとすでに引っ越しが始まっていた。じっくりと行列を眺める。ポツリポツリとハネカクシがやってきた。アリはAenictus laevicepsA. fergusoniの中間型に見える。ハネカクシは3年前にマレーシアのBukit Fraserで採集した新属新種と同属の別種に見える。とにかくアリによく似ていて、行列に顔を近づけないと全然わからない。そのようなわけで地面に寝転がってひたすらに行列を眺め、たまにやってくるハネカクシを拾った。地面に寝転がって変な体勢で採集するのは大変疲れる。常に腕立て伏せを続けている感じだ。十分な標本が採れ、そろそろ帰りたいと思ったら雨が降り出した。
コテージへ戻り、野村さんに顕微鏡を借りて覗くと、アリとハネカクシは予想通りのものだった。ハネカクシはもちろん、アリも変なものだった。これは雄も見てみたいが、今回はまだヒメサスライアリの雄アリが採れていない。
9時過ぎにコテージへ戻ると、重箱弁当が置いてあったのでいただく。オムレツ、エビの揚げ物、タケノコのカレー、トムヤムクン
ひどいお月見で、中瀬君のライトはダメだったようだ。しかし、コテージの軒先に大きなコバネツツシンクイが飛来した。