断虫亭日乗

過ぎ去る日々の思い出をつづるだけ

岸本圭子「虫をとおして森をみる―熱帯雨林の昆虫の多様性 (フィールドの生物学)」を読了(再読)。私が専門にしている昆虫が対象というのもあるかもしれないが、このシリーズ既刊4冊のなかでは一番面白かった。ボルネオの熱帯雨林を舞台としたハムシ科甲虫の研究の記録である。主要な課題は季節性と種多様性である。筆者の研究の紹介を交えつつ、熱帯における昆虫の季節性と多様性の先行研究をわかりやすくまとめている。また、女の人が熱帯で調査を行うのは、いろいろな点で簡単なことではない。さらにボルネオにおける開発の悲しい現状もある。著者の失敗談や現地で見聞きして初めてわかる経験も織り込まれ、全体に興味深く仕上がっている。昆虫の種多様性調査、熱帯での昆虫調査に興味がある人には強くおすすめしたい。