断虫亭日乗

過ぎ去る日々の思い出をつづるだけ

今日は予定通りAleocharaを終わらせ、Tinotusも終わらせた(日本の既知種は1種のみ)。
今日までに扱った標本のほとんどはDavid Sharpの記載した種である。驚くのは、小さなものも解剖せずにしっかり種にわけて、その同定にほとんど狂いがない点である。記載も要領を得てわかりやすいし、Sharpの研究は本当にシャープだと思う。
日本のハネカクシに関しては、イギリスの貿易商George Lewisの採集品をもとに、1874年と1888年に「Staphylinidae of Japan」という論文でまとめている。Sharpは大変几帳面だったようで、標本のほとんどはこのように美しく展足されている。晩年は娘さんが手伝ったそうだが、ほとんどは彼自身の手によるものだそうだ。こういう標本を台紙から剥がして解剖するのは申し訳ない気がする。
Aleochara japonica
日本のヒゲブトハネカクシ亜科は、Sharpのほか、Malcom CameronMax Bernhauerが主に記載している。SharpとCameronの標本のほとんどはここにあるので、今回はこの2名のタイプ標本の検討が中心になる。また、Bernhauerの標本はシカゴのフィールド自然史博物館にあるのだが、59年前にロンドンの自然史博物館と大々的な交換を行ったようで、ロンドンにもかなりのBernhauerの標本があり、随分参考にさせてもらっている。Bernhauerの研究はSharpと同様に緻密。一方、Cameronは少し粗い。いずれにしても、どの研究もほとんど図と言う物が付いていないため、近似の未記載の山ほどあるヒゲブトハネカクシ亜科の研究では、今回のタイプの検討は避けて通れない。
明日から何属をやるか思案中。交尾器の形が面白いGyrophaenaを先にやってしまおうかと思っている。
今日作業しながら、こうやって虫を眺めて過ごし、精神的に成長する機会を得ぬまま年を食っているのだと感じた。