断虫亭日乗

過ぎ去る日々の思い出をつづるだけ

年初めから他人様の原稿を直すことに終始した。10本は見た。また、雑誌によって投稿規定が異なり、多数の論文を見ているとそれぞれの規定を皺のない脳味噌に入れるのに苦労する。ただでさえ注意力散漫なのに今日もポカをやってしまった。
大物は山本君の論文で、行間を詰めた原稿で80ページほどある。前半を見終わったところで、一度返した。まだ4年生で、しかも卒論とは関係のない練習課題だが、下手な修論より質が高い。
北米のとあるハネカクシの属をまとめている。Tomas Lincolin Caseyというアメリカ合衆国の昆虫学者が100−120年前に記載した一群だが、記載と照らしあわせながら実物のタイプ標本を精査していて、Caseyの論文の内容に驚かされた。細かな記述や区別点に関する詳しい議論がきわめて正確で的を得ている。Caseyといえば9200種もの甲虫を記載した大学者である。多くの学者の研究例を見ると、たくさん記載すると広く浅い研究になりがちだが、そのなかで群を抜く仕事量にありながら、Caseyの仕事の精緻さにはただただ驚かされる。右下のモノサシは1ミリメートル。小さいなぁ・・・。