断虫亭日乗

過ぎ去る日々の思い出をつづるだけ

「月刊むし」のクワガタ特集号が届く。クワガタは「きらい」だけど、今回の特集は面白かった。最初の鈴木さんによる「ラトレイユキンイロクワガタ発見記」は美しい写真に感動できるだけでなく、発見と撮影の過程がよく伝わる内容だった。新芽切断行動や喧嘩の様子が面白い。オーストラリアは一度でいいので採集に行ってみたい。
久保田さんらによる「日本産ルリクワガタ族の系統と進化(4)」は同連載の遺伝子解析編。とても勉強になる。オサムシといい、クワガタといい、地理的に分化し、しかも種分化の程度の浅い虫を扱うのは大変だと思う。大変だけに面白い部分もあるのだろう。地理的な分化を扱った研究には食傷気味との声もあるが、さまざまな生物で似たような研究を進め、それが蓄積されると実にいろいろなことが見えてくると思う。そういう意味でこのような研究は高く評価されるべきだ。
この研究に関連した漆山さんと関さんの「コルリクワガタなどにおける交雑実験」はものすごい力作。よくこんな実験をされたものだとただただ感心し、びっくりした。個体群やその特徴が多すぎて、背景を熟知していないと読み切れない部分があるが、結果は理解できた。なるほどという内容。月刊むしを馬鹿にするわけではないが、内容を整理して学術誌に発表して虫屋以外の人の目に触れてもよいと思った。新しい分類体系に疑問を抱き、このような難しい実験をする意気込みそのものにも学ばされた。著者は個人的には存知あげないが、お会いしたいと思った。
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