断虫亭日乗

過ぎ去る日々の思い出をつづるだけ

石の上にも

岩田 久二雄の「昆虫学五十年―あるナチュラリストの回想」を読んだ。本当に素晴らしい本に出会えた。同著者では「本能の進化―蜂の比較習性学的研究」が研究の集大成として位置しているが、この本はより手軽なハチの習性学の研究紹介であり、著者の研究人生を描いた手記である。

昆虫学五十年―あるナチュラリストの回想 (1976年) (中公新書)

先日の森本先生とのお話しにも通じるが、背景にある膨大な知識と研究に対する情熱が行間からひしひしと伝わってくる。書ききれないものが行間からこぼれ落ちそうなのがわかる。やはりそういう本は面白い。

若者の研究者を見ていて感じるのだが、意外に難しいのは、「自分の研究をしっかり理解すること」である。自分の研究をとりまくできる限りの幅広い見識こそが、自分の研究の立ち位置をはっきりさせ、ひいては中身のある普及啓蒙が可能となる。

ところで、昆虫や地味な生き物に関する初心者向けの面白い一般書は案外少ないが、その点でゲッチョ先生こと盛口満さんの本は白眉である。私も学生時代にいろいろな知識をいただいた(もちろん今も)。私は昆虫に関するものしか評価できないが、内容に違和感も間違いもなく、手放しに推薦できる。おそらく他の分類群でも同じだろう。たいへんな取材量と謙虚な姿勢のなせる業である。人のためになる良い本を書けるのは、専門の学者だけではないし、専門家であることに胡坐をかいてはいけないということを、ゲッチョ先生の本は教えてくれる。昆虫や動物のことを楽しくいろいろ知りたい人には、ゲッチョ先生の一連の書籍を強く薦めたい。

盛口満の本

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私が着任したときに事務をしていた赤峰さんが遊びに来た。5年以上ぶりの再会。2児の母となり、ミシンを買ったが雑巾を縫えないなどという他愛のない話しに癒された。

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