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断虫亭日乗

過ぎ去る日々の思い出をつづるだけ

蘭嶼の寶石

10月8日から14日まで台湾に出かけていた。9-11日は蘭嶼(前後は移動で、採集は1日のみ)、12-15日は阿里山と鹿谷郷というところに滞在した。ツノゼミが目的だったのだが、どうにもふるわず。

蘭嶼でカタゾウムシやカタゾウカミキリを見ることができたのは収穫だった。しかしカタゾウムシは保護昆虫につき採集せずにお別れした。

それにしても、蘭嶼のカタゾウムシはどれも本当にきれいで感動した。5種が生息しており、どれも美しい紋や筋の模様がある。(それに比べて日本のは全身真っ黒で、残念としか言いようがない。)

ところで蘭嶼のカタゾウムシ5種は、島内で種分化したわけではない。カタゾウムシの分布の中心はフィリピンにあり、フィリピンの島々で激しく種分化している。蘭嶼の種は、それぞれフィリピンに近縁種がおり、それぞれの祖先が個別に、海流に乗って蘭嶼に流れ着いたようだ。

5種のうち4種は、青緑色の紋を持つという共通の傾向を持つ。おそらく、ミューラー型擬態の意味を持つのであろう。しかし、1種(右上)だけは白い紋を持っている。もしかしたらこの種の祖先は比較的最近流れ着いたのかもしれないし、この種だけが持つ生態的特徴を反映しているのかもれない。台湾の研究者が現在、フィリピン北部の離島のカタゾウムシを採集し、DNA解析から蘭嶼のカタゾウムシの起源を探ろうとしている。結果が楽しみである。

ちなみにカタゾウムシ5種はそれぞれに異なる植物を寄主としており、全種を1日で採集するのはかなり難しい。今回は台湾師範大学の学生さんの案内で、首尾よく探すことができた。

また、珍種のカタゾウカミキリを2頭も見つけることができたが、これは非常な幸運だった。フィリピンのカタゾウカミキリの大半は、特定の種のカタゾウムシに擬態している。しかし、蘭嶼の種は、5種のカタゾウムシのどれにも似ていない。これについてはいくつか考えがあって、まずはこの中途半端な模様が、どのカタゾウムシへの擬態効果もあるということ。つまり蘭嶼の捕食者(トカゲや鳥)が「カタゾウムシ全般に持つ印象」を体現しているのかもしれない。あるいは、狭い島である蘭嶼にはフィリピンほど捕食者が多くないか、「頭のよい」捕食者がいないので、それほど厳密に擬態する必要がない(捕食者による厳しい淘汰がない)のかもしれない。さらにこれも比較的最近流れ着いて、まだ擬態進化の途上にあるとも考えられる。(ちなみにフィリピンのルソン島にも、D. eldanoiというこの種によく似たカタゾウカミキリで、当地のどのカタゾウムシにも似ていないものがいる。)

 

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Pachyrhynchus (= Pachyrrhynchus) and Doliops of Lanyu. 

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Pachyrhynchus tobafolius

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Pachyrhynchus sarcitis kotoensis

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Pachyrhynchus monilliferus sonani

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Pachyrhynchus nobilis yamianus

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Pachyrhynchus chlorites insularis

カタゾウムシについては、それぞれ亜種ではなく、独立種としていいのではないかと、私は思っている。

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Doliops similis