断虫亭日乗

過ぎ去る日々の思い出をつづるだけ

重要文献届く

ウクライナのアリ研究者であるRadchenko氏から別刷り(ポーランド科学アカデミーの雑誌Annales Zoologiciに掲載されたもの)が届いた。ちょうど彼がポーランドでその別刷りを受け取ったときにこちらが催促のメールをしたため、とてもタイミングが良かった。

これは待ちに待った文献だった。こちらがケアリ属の分子系統と分類学検討を始めようとしたとき、ヨーロッパの材料を集めることを鹿児島大のオオズアリ研究者の江口さんに相談したところ、彼を紹介してくれたのだった。彼にこちらの計画を告げると、その返事は驚くべきもので、すでにケアリ属クサアリ亜属の分類学検討を終わらせ、論文を投稿中とのことであった。今回送っていただいた論文はまさにそれで、自分にとって極めて重要なものである。

それにしても、最先端の科学技術でもないのに、同じことをやろうという人が同時に世の中にいることにはいつも驚かされる。現在執筆中のヒラタアリヤドリ属のハネカクシの検討も、同時期にドイツのZerche氏とAssing氏が進めていた。結局、こちらが両者を説得して材料を譲ってもらえたが、それに適うきちんとしたものを書かなければと思っている。

また、ケアリ属の分子系統に関しては、最近Molecular Phylogenetics and Evolution氏に論文が出てしまった。しかし、この論文には材料で重要なものが複数欠けており、充実した材料で解析を進めているこちらには逆転の可能性が残されている。

こういうライバルやライバル論文があると、ますますやる気が出るというものだ。