断虫亭日乗

過ぎ去る日々の思い出をつづるだけ

ゼミ中止

10分前に会議室に行き、パソコンをプロジェクターに繋ぐなどしゼミの開始を待っていたら、開始の10時になっても人が集まらない。それもそのはず、大学院教官の4名中3名は出張で、数少ない大学院生の2人は学会でフランスに出かけている。何人かは来てくださったが、余りにも人数が少ないので、次回9月へ延期することとなった。

実は内心ホッとした。まだデータがあまり充実しておらず、現時点では暫定的な結果でしか話しができなかったからだ。9月には論文の原稿が完成している状況なので、余裕を持って発表できるだろう。

岐阜で木野村先生が見つけてくださった面白いアリの種間雑種について、ガスクロの結果と形態の結果をあわせて短い論文を書くことにした。今日はその関係で、一日中、DNAマーカーを使った雑種の検定について考えたり調べたりしていた。植物と動物ではどうもやりかたの主流が違うようであるし、マーカーの種類によっても検定の重みが随分と違うようだ。安直なRAPDを考えたりもしたが、どうも信頼性に乏しい。

念のためにSteiner夫妻にメールで尋ねたら、すぐに長い長い返事(10ptで2ページ)が返ってきた。なんだかものすごく興味がある感じで、彼らにとってはちょうど熱い課題だったようだ。結局のところ、マイクロサテライトがよいとのこと。そして最近出た近縁種のプライマーノートに関する論文も教えてくれた。もちろん彼らの意見に従うつもりで、今後の展開がなんだか楽しみだ。最初に彼らと接したのは単なる材料集めが目的だったが、いまでは一番刺激的な知識や情報くれる共同研究者となっている。本当に出会えてよかった。

さて、そのメールのなかに、Seifertというオーストリアのケアリの大家がChthonolasius亜属の雑種問題について長年研究を続けていて、こんどのWilson退官記念号のその問題を扱った斬新な論文が載るとの連絡があった。そして、その初稿を転送してくれるそうだ。Seifertは分類から行動学、遺伝などケアリを材料に幅広い研究を進めている。こういった、種の多様性レベルから分子レベルまで、一つの分類群に対して深く広く取り組んでいる研究姿勢には共感するし、その教え子をうらやましく思う。