断虫亭日乗

過ぎ去る日々の思い出をつづるだけ

新種発見

今日は6月に極東ロシアで採集した好蟻性ハネカクシの整理と標本作成をした。ロシアではクサアリ類の26個の巣から500頭程度のハネカクシを採集したが、それらの同定を行った。

500頭採集したなかで、現在研究中のPella属のものが200頭程度あり、そのなかの180頭くらいはP.jurecekiという普通種、次にP.rambousekiという種が10頭あり、あとの10頭は数種の珍種からなるものと思われた。

Pella属は旧北区に広く分布し、主としてクサアリを寄主とする。どの地域でも6-8種がクサアリの巣に生息するが、通常は2、3種の普通種が優占し、あとの種は極端に少ないことが多い。極東ロシアの場合、P.jurecekiとP.rambousekiの2種しか記録されていなかったが、この2種が普通種だったようだ。今回のロシア調査の目的は、他の地域の状況からして確実にさらなる種が分布していると思ったので、未記録種を採集することにあった。

10頭は一見、P.japonica、P.lugens、P.zhouiという3種からなると思われた。もちろんこれらは極東ロシア初記録となる。P.zhouiは北京産の標本をすでに検している未記載種である。じっくり観察してみると、さらにそれらとは違う種が2頭混じっているように見えたので、解剖してみた。Pella属の種は非常に分類が難しく、確実な種の認識には解剖して交尾器を見る必要があることが少なくない。結果、その2頭には2種が混じっていて、2種ともいままでに見たことの無い、つまり「新種」であった。極東ロシア産のPella属の種は、地理条件から、たいてい中国北部や韓国や日本と共通と想像していて、これら周縁の地域の材料はふんだんにあったので、まさか新種が出るとは思わなかった。しかも2つも!