断虫亭日乗

過ぎ去る日々の思い出をつづるだけ

今日は久しぶりに虫に触った。現在まとめているPedinopleurusハネカクシの標本作成を行い、岐阜の木野村先生から長らくお預かりしていて、少しずつ進めていた好蟻性のアリヅカムシハネカクシの同定を終わらせた。木野村先生の採集の手腕は天下一品だが、それだけに標本量も半端ではなく、長い道のりだった。BasitrodesBatrisodellusという属のアリヅカムシが一番難しかったが、今日は野村さんに両属についていろいろ聞くことが出来、問題の大部分は解決した。今日も一つすっきり。

Steiner夫妻に研究相談。いつも5分で的確なアドバイスをくれるが、今日は5分で「うーん、もう少し考えるから、2、3日待って」との返事。珍しいけど楽しみだ。

写真はストックホルムの博物館Naturhistoriska riksmuseetから借りたStaphylinus limbatus Paykull, 1789(=Pella limbata)の原記載と肖像とタイプ標本。PaykullはLinneの高弟の1人である。こうやって200年以上前の標本が郵送で借りられるのだからすごい。


過去の日記を編集するとき、当該日記とどこがリンクしているかが表示される。それを見ると、「キーワード:マムシ」でリンクされていた。マムシのことなど書いてないのに、と思ったら、「タマムシ」が拾われていた。単語に切れ目の無い日本語はときに紛らわしい。ついでに本当のマムシ(蝮)について記すと、実は噛まれた経験がある。大学3年生のときだったか、指でつついたら噛まれた。その晩には手がグローブのように腫れ、翌日には腕全体が太もものように腫れた。痛くて眠れないし、全身のリンパ腺が痛んだ。完治には一ヶ月程度かかった。図鑑などには「死ぬことは無い」と書いてあるが、「死ぬことは無い」程度の怖さを思い知った次第。

そういえば昨日、キジラミ屋の松本さん(おぢさん)と久しぶりに会った。今日から小笠原に行く由。小笠原にはもう何度も調査で通っていらっしゃるので、いろいろと現地の実情を聞くことが出来た。印象としては、もう最高に大変な状態。毎年毎年これでもかというくらい、新しい外来種が見つかるらしい。オガサワラハンミョウの推定生息数はやっと3桁に届く程度で、これも移入種リュウキュウマツやモクマオウに生息地を奪われている。また、ガジュマルは古くから植えられていたが、送粉者のイチジクコバチがいなかったため増えなかった。しかし最近、イチジクコバチ付きの苗が移入され、もともと島に植えてあったガジュマルが実を食べる鳥を介して爆発的に増えつつあるらしい。アカギの駆除のようやくとりかかろうというときに、こんどはもっとタチの悪いガジュマルである。

アカギといえば、樹に注射して枯らせる薬があるらしい。しかも空気中で分解し、土壌には無害とのこと。低地河畔のヤナギや海岸のマツに代わってはびこっているニセアカシア(ハリエンジュ)にもこういった薬が使われるという話しを聞いたことがあるが、もっと普及して欲しいものだ。

まだまだ色々あるが、とにかく小笠原の未来は明るくなさそうだ。小笠原問題関係者の皆さん、頑張ってください。