断虫亭日乗

過ぎ去る日々の思い出をつづるだけ

今日は久々にじっくりと虫を見る時間を作り、例の怪しいケアリを形態からも他種と区別できるかどうかを観察して調べた。他種と比較しつつ、3時間じっくり観察した結果、ようやく容易に識別できる形質を見つけた。

ケアリというのは、同所的に複数種が生息する旧北区産のアリのなかでは、もっとも分類と種同定の難しい分類群ではないかと思う。トゲはないし、表面彫刻もない。ただ典型的なアリンコの形をしているだけ。頼りになる形質は「測定結果」となっている。しかし、ケアリを本格的に始めた昨年来、こればっかりをずっと見ていたら、だんだんと種同定の感覚が身についてきた。いまは職蟻を一匹渡されても、測定などしなくても、9割がた同定できるだろう。分類学者の使命としては、こういった技術を、いかに一般の研究者や調査者がだれでも利用できるようにするかが重要であろう。ケアリは各地に最も普通なアリの仲間であり、より簡便な絵解き検索が出来たら貢献度は大きい。なかなか難しいが、時間が出来たら書きたいと思っている。なお、日本産アリ類画像データベースにケアリ属はもちろんあるが、これで同定するのは、比較標本がないと素人には難しいだろう(著者に叱られるかな…)。