断虫亭日乗

過ぎ去る日々の思い出をつづるだけ

今日の午前中は自宅に生命保険の人が来て、契約内容の変更を行う。30過ぎたし、ガン保険を付け加えた。

午後から科博へ。7月の出張の打ち合わせを業者の人と行う。昨日あたりようやく四国九州の平地でニイニイゼミが鳴き始めたというのに、7月13日に山形の山地で鳴いているセミなどいるか心配である。場合によっては企画を大幅変更することにした。

今日は夕方から東大で虫ゼミがあったが、そのようなわけで行けなかった。また今日はマイクロサテライト実験に備えてのクサアリの材料の整理を行った。かなりの材料があり、しかもアルコールに漬けてあったおものが多かったので、一安心。昨年の実験では、アセトンに5年以上漬けてあった材料はことごとくダメだったので、アセトン標本はこれを機に全て処分した。一番良いのは、(できれば無水アルコールに数日漬けたのち)シリカゲルを入れた箱に入れて急速に乾燥させた標本ではないだろうか。その後普通に管理すれば、確実にDNAは取れている。酢酸エチルで殺虫しても、半日程度の短時間であれば問題ない。もちろん、これは乾燥標本に適した研究材料での話しである。

20時近く、東大の近くの飲み屋で一杯やるというので、駒場東大へと向かう。駅へ着くと、しばらくして遠くから坂本君が走ってきた。わざわざ迎えに来てくれたのだ。赤いTシャツの胸の部分に「シャー専用」と書いてあったのを見て、感心した。坂本君の案内で店に行くと、なんとその店の名は「さわやか」であった。緑色の看板にあやしく「さわやか」と書いてある。坂本君は「メンバーにピッタリの名前の店っす」と言っていたが、思わず笑った。店に入ると、東大の伊藤さん、中野さん、加藤君、神保君、須島さんという、早春のそよかぜのような人たちがいた。最初のお二人はお初。飲みながら、「どうして形態で示された系統仮説の分子の結果が一致することが多いんですかねぇ」という伊藤さんの話しに始まり、分類群の定義や形質の極性の判断の話しまで、楽しい会話になった。科博にはありえないものなので、楽しい。また、ABIのBigDyeを32倍に希釈しても読めるとか、ExoSapは2倍でもいけるとか、実に有用な話しを聞くことができた。

22時という健康的な時間に解散。わたしと坂本君は渋谷でラーメンを食べることにし、坂本君のおすすめの店で路地裏の「すずらん」へ行った。たしかにおいしかった。坂本君は昨日まで京都に行っていたので、そのお土産話もいただく。女の子の京都弁は可愛いという意見の一致を得たが、坂本君は「京都弁だと可愛さ1.5倍増しですね」と言っていた。

すみません。写真の入ったパソコンを職場へ置いてきたため、今日は写真がありません。先日載せたヒゲブトテントウダマシの話しで御勘弁を。

テントウダマシ科に属する甲虫であり、アリの巣に棲んでいる。アシナガキアリに固有のようで、少なくもわたしはそれ以外の巣から見つけたことがない。日本にも八重山諸島には分布している。触角が太く短くなるのは、好蟻性昆虫に広く見られる現象で、その理由には以下のことが考えられる:1)長い触角はアリに攻撃されやすい;2)長い触角は狭い巣を歩きまわるのに不便;3)かといってアリの巣を探すという機能が必要なので、短くし、表面積を増やした;4)同時にアリの好む物質を出す腺を発達させたので、膨らんだ。この種の場合、不思議なことに、雄の触角のほうが太い(写真は雄)。アリの巣に溶け込む機能に、雌を探す機能を付け加えた結果なのかもしれない。似たような触角を持つヒゲブトハネカクシ亜科の甲虫でも、雄の触角のほうが太い場合がある。さて、このヒゲブトテントウダマシがアリの巣で何をしているかというと、あまりわかっていないのが実情である。個人的には、巣の壁面や巣の周囲に発生する菌類を食べているのではないかと予想している。テントウダマシ科の大部分の種が菌食性だからである。また今回見つけたのは、夜になると巣のなかから這い出してくること。夜間に巣の入り口をみると、たくさんの成虫と幼虫が這いまわっている。そして、ときに写真のように、巣の周囲の土の表面を舐めるような様子を見せる。なにか微小な有機体を食べていることは確かのようだ。

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