断虫亭日乗

過ぎ去る日々の思い出をつづるだけ

あまり書くことがないので、思いつく昆虫の本、他のブログでは紹介されにくそうな本を選び出す。

尊敬してやまない佐々治先生のテントウムシ研究集大成。面白い。

テントウムシの自然史 (Natural History)

テントウムシの自然史 (Natural History)

申し訳ないが、絶版本。しかし珍しいものではなく、たまに古本で1万円程度で手に入る。オサムシ研究のエッセイで、著者のオサムシ事始から、様々な研究事例が紹介されている。分子系統の大枠もひと段落といった現在のオサムシ学だが、この本は今でも新鮮さを持っていると思う。昆虫少年には読んで欲しく、復刊して欲しい本の一つ。

オサムシを分ける錠と鍵

オサムシを分ける錠と鍵

古い絶版本。昆虫の良書には絶版本が多い。比較的珍しいが、あまり競争のはげしい本ではないので、待てば手に入る。「日本のファーブル」ともよばれる著者によるハチの生態進化に関する本。日本語で書かれた1つの昆虫分類群の生態学の教科書として、これほど重厚な内容の本が他にあろうか。少なくとも社会性昆虫では他を圧倒していると思う。もし当時、英語に訳されて出版されていたら、歴史的な教科書の一つになっていたのではないだろうか。

UP-Biologyシリーズの一つ。絶版で、入手は難しいが、たいていの大学図書館にはある。このシリーズは大学生の生物学入門用の教科書なのだが、本書はあまりにも難しいとのことで、佐々治先生の次の本に置き換えられた。学部生にはたしかに難しいかもしれないが、分類学に関する本質的なことが濃縮されていて、薄いながらに大変読み応えのある本。

動物分類学入門 (UP バイオロジー)

動物分類学入門 (UP バイオロジー)

岩波新書。絶版だが入手は容易。トビムシ研究者の研究半生記。読み物としてもとても面白い。一つ印象的な話しがあった。駒井卓教授に「どうです、君は洞穴生物をやってみてませんか。そしてそれにシロアリの巣に共生している好白蟻性生物も含めて考えてみたら。」と言われ、それに対して著者は、「しかし当時の私は若かった。生物学とは生命の学問であって、それはすべての生物に普遍的な法則を発見することでなければならない。一般論にならないようなもの、いわば物好き半分の仕事は科学的にみて価値が低いので、洞穴やシロアリの巣のような特殊な環境をしらべ、その生物を研究することは、それが特殊例であるという認識のもとにおいて価値があるのだから、そればかりに専心するのは本末の転倒であり、あまり意義がないのではないか。」と考えたようだ。これを読んだときには考えさせられた。また、もし吉井先生が好白蟻性生物を始めていたら、きっと好蟻性生物にも手を出していたはず、などとも考えた。

洞穴学ことはじめ (岩波新書 青版 688)

洞穴学ことはじめ (岩波新書 青版 688)