断虫亭日乗

過ぎ去る日々の思い出をつづるだけ

昨日の歩道清掃の疲れがひどい。今日は日曜なのでゆっくりすることにする。適度に天気が良く、昼前に洗濯を済ませ、屋根に干す。宿舎などの写真を撮るために、スリッパでブラブラする。珍しく「トイレの主」である大きなスミスヤモリGekko smithiが日の当たる壁に貼りついていた。

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川の写真もついでに撮ろうと思い、宿舎の前を下ったところにある橋へ行く。年々老朽化が進んでおり、足がかりの木板がかなり腐っている。今回も一度踏み抜いてしまった。帰りにロスリーさんに話し、いつもの恩返しに橋の修復ができないかと考えている。

怖い橋なので足元を見て歩くと、視界の片隅に引っかかるものがあった。いるではないか、ヒメサスライアリが。しかもよく見ると、探し求めていたAenictus gracilisである。行列を辿ると、野営巣は橋の上の木切れのしたにあるようだ。採集の準備をすべく、スリッパで走って宿舎へ戻る。

宿舎でバケツを洗い、よく拭き、内側の上部にたっぷりと油を塗った。そして手袋と腕あてを付け、長靴を履き、準備完了。橋へ向かって再び走る。見はじめてから30分後に移動が終わり、数頭のノミバエを得た。しかしこれだけで済むはすはなく、大部分の働きアリと蟻客はすでに野営巣のなかにいるにちがいない。

移動の完了した巣からは、早くも捕食行列が伸び始めている。一網打尽にするため、急いで野営巣を採集することにする。橋の補強として置かれた木切れを起こすと、直径10センチほどの幼虫の塊が3箇所見えた。それらを急いでつかんでバケツへ放り込む。一通りの幼虫を採り終えたところで宿舎へ戻る。仕分けがたのしみだ。

まずはバケツの内側の壁を走る働きアリを吸虫管で吸い、麻酔のうえ、アリの数を数えつつ、蟻客を探す。もちろん、アリとアリの幼虫もあるていど採集する。

この作業を数十回繰り返し、2時間が経ったころ、ようやく目に見えて働きアリの数が減ってきた。こうなるとじっくりと蟻客を探すことができる。

だんだんと蟻のなかに蟻客が混じりはじめた。まず現れたのはAenictoteras malayanusRosciszewskia magnificusである。どちらも異様な蟻型をしたハネカクシで、ここを基産地とする。次にTrichotobia gracilisや微小なAenictoxenusというハネカクシが現れた。幼虫にも注意し、Vestigipodaを探す。10年以上前にWeissflog氏がここでケブカヒメサスライアリの巣から大量の個体を得ており、V. maschwitziという名でDisney氏により記載されている。最後の最後に1頭のみ現れた。成虫にはまだ早い段階だったのかもしれない。

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結局、仕分け作業には4時間半を要した。収穫は満足できるもので、いくつかの研究に必要な材料を確保することができた。もう一つくらい巣を見つけたいが、それは贅沢かもしれない。今日も結局、30箇所以上を刺されてしまったが、この種はそれほど痛くない。

今晩は満月に近い朧月夜で夜風が涼しい。適度な晴れだったため、夕方に軽く小雨が降っただけだった。日没直後にヒメサスライアリの雄が3種4頭飛来した。2頭飛来したものは非常に大きく、今回初めての種だった。