断虫亭日乗

過ぎ去る日々の思い出をつづるだけ

8時起床。昨日の採集品を整理した後、ウィンクラーの抽出物を取り出すが、成果は今ひとつ。湿度が高いうえに気温が低く、虫が落ちにくい。10時にロッジを出て遅い朝食をとる。牛肉と太麺のスープ。

昨日FITを仕掛けたKM33へ行く。まずは腐肉トラップを2個設置。一足先を歩いていた片山君が呼ぶので、FITの受け皿を見に行くと、ヒゲブトオサムシが2頭落ちていて狂喜する。

車へ戻るが、小松君が来ない。小松君を呼びながら森のなかへ入ると、小松君が発狂してトラになっていた。ではなく、小松君が駆け寄ってきて、「とてもつまらないものが採れました。本当につまらないです」と言って、飼育ケースを差し出した。なんと先ほどの同種のヒゲブトオサムシの生きたものが数頭入っているではないか。その場所へ行くとオオズアリの巣があり、巣を掘るとたしかにヒゲブトオサムシが歩いている。さらに掘り返すと、幼虫も出てきて、興味深い行動を観察することができた。ヒゲブトオサムシScaphipaussusという属のもので、確実に新種である。

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付近にハシリハリアリLeptogenys sp.の移動行軍があり、観察するとWroughtonillaという好蟻性ハネカクシが1頭だけだが採れた。新種である。

その後標高1200mの展望台へ行くが、あいにくの小雨で景色はよく見えず。そこから少し下り、Pha Deaw Daiという標高950mの歩道へ入るが、虫が少ない。片山君が土を篩っていたが、そちらはなかなか良かったようだ。駐車場の脇の池にトビイロゲンゴロウと大型のタイコウチがいた。

14時半に遅い昼食。牛肉のカレーと野菜炒めをかけたごはん。それからDan Chang(Elephant Crossing)というゾウが現れる場所へ行く。なかなか良い林だが、近頃ゾウが通っていないようで、お目当てのゾウ糞が見つからない。

倒木にあった大型シロアリMacrotermesの坑道にハネカクシが2頭見つかるが、写真を撮ろうとして逃がしてしまった。その帰り際、木の根元にヒメサスライアリの一種Aenictus binghamiの行軍を見つける(Ae2)。今回の調査で一番の目的はこのアリから記録のあるAenictophila thailandicaというハネカクシである。アメリカのグンタイアリ研究者Scheirlaが1960年代に現在のKhao Yai国立公園内であろう「Pak Chong」で採集し、ハネカクシ研究者Seeversが1965年に新属新種として記載している。近縁種は知られていないが、形態情報から私なりの予想があり、分子系統用の材料がぜひ欲しいと思っていた。

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しばらく行列を観察し、巣の場所の見当をつけて車に戻る。昼食から間がないが、食堂が19時に閉まってしまうので、18時過ぎに遅い夕食をとる。豚肉のチャーハンを頼むが、残念ながら食べきれず。

その後、Aenictus binghamiがいた場所へ再び行き、巣のまわりをドンドンと叩いて刺激する。しつこく叩くと大量のアリが飛び出してきた。だんだんと巣の外へ行列が延びてきたので、そこを観察すると、小型のハネカクシがまず現れた。なんと明らかに新属である。次に期待していたAenictophila thailandicaが現れた。これで今回の目的のほとんどが達成されてしまった。それから2時間行軍を観察し、充分なハネカクシに、明らかに新種と思われるノミバエを得ることができた。

21時半にロッジへ戻り、早々に寝る支度をする。