断虫亭日乗

過ぎ去る日々の思い出をつづるだけ

8時起床。標本の整理をし、9時にロッジを出る。朝食は牛肉と太麺のスープ。

最初にHaew Suwatという滝に向かう。Pha Kluai Maiというキャンプサイトから歩道が通じており、滝に向かう道すがら採集しようということである。ワタナさんによると2kmだそうで、ゆっくりと進む。途中、ハシリハリアリの巣を2つ見つけ、Wroughtonilla属のハネカクシをそれぞれ1頭と2頭得る。昨日のものと同種であろう。巣を軍手でつかんで篩うのだが、必ず数頭に刺されてしまう。かなりの痛みなので少し恐ろしいが、ハネカクシの魅力にはかなわない。

遠足の中学生とすれ違う。みな興味津々でこちらの様子を覗き込む子もいれば、挨拶をして足早に過ぎ去る子もいる。共通するのはどの子も愛嬌があってかわいらしいこと。平均して今の日本の子供とは明らかに違う。育っている環境の違いがそうさせるのだろうが、いずれにしても子供は子供らしくかわいいほうがいい。

しばらく進むと小松君がしきりに地面を掘っている。何かと思ったらヒメサスライアリの一種Aenictus sp.の仮巣を見つけたようだ(Ae3)。しかもハネカクシ、ノミバエ、シミまで得ているとのこと。ハネカクシは見たところMalaybergiusという属の新種である。マレー半島から1種のみが知られていた属である。最後には無翅無脚のVestigipodaの新種も得られた。この巣からは4種の好蟻性昆虫が得られたが、すべて新種に違いない。

さてそろそろ昼にしようと思ったが、なかなか2kmが終わらない。10時に歩き始めて13時半にようやく出口にあたるHaew Suwatに到着した。地図で見ると5kmほどあった。片山君はそれから30分ほど遅れてきたのだが、その間に滝の駐車場で虫の観察をする。一番の収穫はアリスアブの幼虫と蛹で、2ヶ所のアシナガキアリの巣から出た。アリスアブは寄主特異性が強いものばかりなので、この種もアシナガキアリに固有である可能性が高い。東南アジアのアシナガキアリには帰化種説があり、私はそれを疑っているのだが、この発見によってますますその考えが強まった。

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14時半にロッジへ戻り、片山君は滝で採集した土壌をウィンクラーに設置、私はいくつか標本整理を行った。15時に遅い昼食。豚肉をミントと一緒に辛く炒めたものとナスと鶏肉のグリーンカレーをごはんにかける。グリーンカレーが気に入った。

それからDan Changへ。昨日のヒメサスライアリの巣は移動してしまっており、ようやく移動先を見つけたが、地中深くにあるようで、どんな刺激をしても出てこない。追加のハネカクシを期待したが残念だった。小型のハシリハリアリの巣からおそらく昨日とは違う無翅のノミバエを得る。

18時半に夕飯。まだ空腹感がないが、早くしないと食堂が閉まってしまうので仕方ない。パッタイ(焼きそば)を食べる。

夕食後は食堂とビジターセンターの付近で夜回り。朽木につくオオキノコムシ、ゴミムシダマシ、色とりどりのゴミムシなどを採集した。コケ模様の大型のサシガメは見事だった。

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また、ヨコヅナアリPheidologeton diversusの巨大な巣が移動をしており、そこに大型の好蟻性コガネムシHaroldius sp.を見つけた。間違いなく新種だろう。

今日は歩きっぱなしで疲れた。長靴を脱ぐと両足が血に染まっていた。こちらで買った安物の靴下がいけなかったようで、繊維の隙間から血を吸われてしまった。23時就寝。