断虫亭日乗

過ぎ去る日々の思い出をつづるだけ

今日も朝から細石君と実験。昨晩かけたPCRは成功していた。今回は乾燥標本からDNAを抽出したのだが、9割がた上手くいっていた。私の経験でもアリの乾燥標本(採集から早めに標本化したもの)は成功率が高く、下手な液浸よりずっとよい。大学や博物館の収蔵標本に将来性を感じる。
午後にシーケンス反応をしている間に、ヒメサスライアリの雄の99%エタノール液浸の交尾器を取り出し、DNA抽出のため酵素の液につけた。雄蟻は交尾のために生まれ、交尾に死すという生き物だが、ヒメサスライアリではとくにその感が大きく、腹部の半分は交尾器で占められている。交尾器は硬くなった筋肉に覆われていて、取り出すのに往生した。とりあえず32個体。
先日書いた雄蟻-職蟻対応の問題解決が主目的だが、解剖の過程で複数種の標本を見ているうちにいろいろと面白いことがわかり、この研究におけるいろいろな可能性を見出すことができた。雄だけで系統樹を作っても、形態進化の材料として十分に面白い。雄だけで記載したくなった先人たちの気持ちがわかる。
そんなことをしているとあっという間に20時を過ぎた。久々に虫をさわった充実感。先に片付けるべき仕事は残っているのだが・・・。
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水生甲虫の世界で「Makhan問題」というのがあって、Makhanという人がとんでもない記載をしてシノニムを作りまくっているうえ、タイプを他人に見せないという。そのMakhanさんがアリの世界でも問題を起こしているようだ:
http://www.mapress.com/zootaxa/2008/f/zt01732p064.pdf