断虫亭日乗

過ぎ去る日々の思い出をつづるだけ

午後から会議、夕方から山本君の指導。山本君はすぐに記載分類の勉強と実践を始めたいそうだが、先週、それにあたっていくつかの条件を提示した。
一つはヒゲブトハネカクシ亜科を材料とし、少なくとも学生の間は材料は変更しない。すぐに始めるには材料が揃っているという点と、私の専門であるというのが理由である。もちろん、他の分類群をやってもいいが、そうなると材料は提供できないし、すぐに分類の論文書きというわけにはいかない。そして、引き続きそれを研究してもらうのは、こちらの投資の問題である。難しい分類群なので、指導は大変であるが、圧倒的に研究者の足りない分類群なので、こちらは力を注ぐ。
もう一つは、とにかく期限を設けてしっかり成果を出すこと。各地の大学に分類をやっている学生は多いが、最近の著しい傾向として、とにかく「しっかりやる」学生が少ないということがある。絵を描いて紙にする作業は、なかなかつらいところがある。しかし、分類ほど勉強や手作業の努力が成果に結びつく分野はない。高い学費を払って、人様に標本を借りて、しかも時間はたっぷりあるのに、なぜ研究をしないのだろうか。
さて、そして今日、山本君は「ヒゲブトハネカクシ亜科をやります」という結論を出した。
実はヒゲブトハネカクシ亜科を勧めるにあたって、もう一つ理由がある。NZの甲虫の大家R. Leschenから「おまえの学生でNZのヒゲブトをやる奴はいないか」という話しがあって、見込みがあればぜひこちらの若手にやらせたいという思いがある。NZは地史や動物相が面白く、もしまとまれば、相当良い研究になるからである。