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NHKハイビジョン特集の「渋谷でチョウを追って〜動物行動学者日高敏隆のまなざし」 のDVDが届いたので見る。思いがけず非常に良いドラマで、昆虫の内容を差し引いても感動できるものだった。
日高さんとは面識はないが、私はこの人に大きな影響を受けている。8歳か9歳のころに小学館から「甲虫のくらし」という生態図鑑が出て、その製作と監修が日高さんなのであるが、この本がなければ昆虫との縁は子供のころに切れていたかもしれない。今読んでも生態図鑑としてすばらしいが、当時印象的だったのは、巻末にある当時の京大院生や若手卒業生のエッセイである。これで「研究」というものの実態に触れた気がした。エッセイの最後に日高さんのシデムシの話があり、これを読んで以来、私はシデムシが大好きになり、都会に住んでいてなかなか出会えない分、常に憧れの虫となった。
今回のドラマにも、シデムシが出ていた。(本当ならばクロシデムシやコクロシデムシが出てくるべきなのだが、ドラマではオオヒラタシデムシ。)
それにしても驚かされるのは、日高さんの幼少期からの慧眼である。小学生のころからチョウの行動に興味を持って調べたようだが、その興味の内容は子供とは思えない。私もチョウが好きだったが、飼育して羽化させるまでの様子を楽しむ程度で、それよりもいろいろな種に触れることを喜びとしていた。行動学肌と分類学肌の違いなのだろうか。
ところでどうしてDVDが届いたかというと、故宮川澄昭さんのゾウムシ標本がドラマ中に出てくるのだが、その標本を貸し出したからである。日高先生の昆虫の先生が宮川澄昭さんだったそうで、ドラマ中に重要人物として登場している。全く知らなかったことで、これには驚いた。