断虫亭日乗

過ぎ去る日々の思い出をつづるだけ

打って変って「普通の虫」の写真を。いわゆる「オサムシ」の属するオサムシ上族Carabitaeには主に4つの分類群があって、汎世界的な分布を持つオサムシ族Carabiniのほか、ユーラシア北部から北米の一部に分布するセダカオサムシ族Cychrini、オーストラリア固有のオーストラリアオサムシ族Pamborini、南米に固有のチリオサムシ族Ceroglossiniがある。また、オサムシ族はオサムシ亜族Carabina、カタビロオサムシ亜族Calosomini族に分けられる。前者はユーラシア、アフリカ北部から北米の一部に分布、種数と形態で最も多様な一群である。世界中に熱心な収集家がいる。
前置きが長くなったが、そのオサムシ亜族のなかで、写真のマイマイカブリDamaster blaptoides(右)とイボハダオサムシProcerus caucasicus(左)は大きさや立派さのうえで東西の双璧といえるだろう。
日本固有(千島にも分布)のマイマイカブリのこの細長い姿は、オサムシとしてはきわめて異形で、古くはヨーロッパの収集家の垂涎の的であったという。マイマイカブリは地域によって色や大きさが異なり、一番美しいのは、東北北部のキタカブリという亜種で、小柄ながら、胸は赤く、翅は緑色に光る。そして最も立派なのは五島列島福江島の個体群で、最大69ミリに達する。九州北西部の個体群には大きなものが多い。一方、コーカサス地方からヨーロッパ南部に分布するイボハダオサムシの重量感はすばらしく、かつては日本人の収集家にとって憧れの存在だった。イボハダオサムシには他にも6種おり、この種より大きく、ズッシリとしたものもいる。いまでこそ種によっては安価で手に入るが、一度捕まえてみたいオサムシである。
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