断虫亭日乗

過ぎ去る日々の思い出をつづるだけ

今回の地震で被害にあわれた方、とくに東北では多くの人々が命を落とされ、いまなお不安な一夜を過ごされている方が多数おられると思います。一日も早く困難な状況が回復されますようお祈りいたします。
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今日はAleocharaをお休みし、アリノスハネカクシ族のWroughtonilla属を検討した。私はWroughtonilla属群を定義し、それに関する論文を最近2本書いたのだが、その属群のもとになっているWroughtonillaについては標本の不足により再検討を俟っていた。私の研究による他種の異動の結果、Wroughtonilla属はインド、スリランカマレー半島から知られる一種W. lobopeltaeのみとなっていた。今日、Cameronによって「W. lobopeltae」と同定されたインドとマレーシアの標本を検討し、それが合計3種の明らかな別種によって構成されていることが判明した。この属群の種は地理的に分化している傾向が強いので、おそらくスリランカの標本(ブリュッセル自然史博にある)も別種であろう。いつか検討する必要がある。インド産の2種は同じ南インドのNilgiri Hillsのもので、不思議に感じたが、地図で見るとNilgiri Hillsは広大で、2種ぞれぞれ別の場所で採集された可能性が高い。興味深いのはマレー半島の標本で、マレー半島のこの属群はかなり理解しているつもりだったので、同地のこの属の記録は何かの誤りだと思っていた。しかし、間違いなくWroughtonilla属の種だった。ラベルと見ると、場所はThe GapというFraser's Hillの近くで、高標高地のようだ。いつも低標高地しか見ていないので、高いところに別のものがいるのは納得できる。いつか調査に出向きたい。この属群には奇主特異性や形態の進化など、いろいろ面白い現象があるのだが、あまり専門的なことをここに書いても長くなるので、ここまでにしておく。
夕闇の迫る閉館時間間際の博物館。