断虫亭日乗

過ぎ去る日々の思い出をつづるだけ

激しい雨と猛烈な風の音で目覚める。市房山は傘をさしながら登れるような山ではないので、しばらく様子を見て諦めることにした。カッパを着ればよいと思うかもしれないが、石の下のアリの巣を観察するには、傘がないと巣の中に水滴が落ちて、採集にならない。
山を下りて、移動するとだんだんと雨がやんできた。草原を見つけて適当に車を降り、石を起こす。偶然、ジョーがクロシジミの幼虫を見つけた。予想外の発見で、小松君が大興奮していた。牧場だったようで、これまた偶然ダイコクコガネを見つけたりした。おそらく記録のない産地だろう。
帰りにラーメン屋により、遅めの昼食。
17時ごろ福岡へ帰着する。レンタカーの返却までにまだ時間があったので、立花山へ向かった。昨年、私が未記載種のすごいアリヅカムシを採集したので、その追加を得ようということになった。帰り際に金尾君がそれらしいものを見つけ、狂喜したが、よく見たら既知種だった。
山本君を呼んで日福飯店で夕飯を食べ、中洲川端駅でジョーとお別れした。明日からは小松君と信州大へ行き、松本周辺で採集することになっている。
ジョーはイギリス人には珍しい生粋の虫屋で、16歳からアリヅカムシの収集を始めたという。ただし大学ではショウジョウバエを使ったEvo-Devoをやっており、現在もコロンビア大学ポスドクとしてその研究を続けている。また彼は、副業としてアリヅカムシの系統も調べている。今回はその一環で、好蟻性種の種内変異をいろいろな切り口で調べたいとの希望で、コヤマトヒゲブトアリヅカムシの調査に来日した。どんな成果になるか楽しみだ。