断虫亭日乗

過ぎ去る日々の思い出をつづるだけ

昆虫学会より戻る

週末は昆虫学会に出かけていた。

初日は「未来の科学者を育てる」というシンポジウムだった。子供たちの理科離れに対する問題も含めたものだと思う。最初の五箇さんの講演が最高に面白かった。五箇さんは有名人でテレビにもよく出ているが、同時に正統な研究もしっかりやっているので、砕けた話しにも説得力がある。2番目の方は・・・会長の「まったく共感できないし、議論にならない」というご意見に賛成。3番目の中学生のダンゴムシの講演も実に面白かった。その研究の内容には単純に感心したし、中学生の女の子らしさを正直に出した内容に心が温まった人は多いと思う。最後に井上さんの女研究者の就職と仕事の問題。男として考えさせられる内容であり、問題に対する冷静な分析と苦労時代の真摯な姿勢に共感を覚えた。しかし皮肉というか幸運なことに、最後の会場にいた主婦の方の意見が、このシンポジウムの趣旨に一番合致するようにも思えた。(もちろん、こういうシンポジウムを趣旨通りに組むというのは非常に難しいと思う。)

2日目は一般講演のあとに「秋の学校」というシンポジウムだった。これも大変面白かった。とくに深津さんの研究の面白さと勢いにはびっくりした。その他の先生方の講演も聞いて、教育者としていろいろと考えさせられた。学生向けのシンポだったようだが、本当に聴いて良かった。今回の学会で一番お得感のある内容だった。

来年の昆虫学会は福岡で、私はシンポジウム担当なので、何にしようかと今から頭を悩ませている。今回は面白いことを詰め込み過ぎて、しばらくは真似できない(重複してしまうという意味で)ことばかり。ズルイという印象だった。

今回は例年と一日ずれたプログラムで、最終日の今日は平日になってしまい、多くの人(働いている方)が最終日に参加できないというのが残念だった。

その最終日は朝から講演を聞いてまわる。分子系統を使った発表が多かったが、「その系統樹からそれは言えないだろ」という発表が少なからずあったのは気になった。分子系統解析は統計なんだから、支持の弱い分岐に対して物語を作ってはいけない。

それと、細かいことだが、speciesに対して「種類」という言葉を使っていた学生やポスドクが半分以上いたと思う。あくまで「種」。

またさらに細かいことだが、座長になった人が、次の発表の著者全員の名前を読み上げるのにはイライラした。ただでさえ時間が押して質問できないこともあるのに、発表者の時間を削る妨害行為だと思う。

最後に好蟻性小集会。椅子が一つもない超満員状態だった。(募集時に例年の参加人数を訊いておくべきだと学んだ。)私を含め、今日中に帰る人が中座したが、盛り上がっていたようだ。最初の小松君の講演を聴いてギリギリの電車で帰った人が多かったので、小松君を最初にしてよかった。

とにかく楽しい学会だった。少人数の運営事務局で大変だったと思う。お疲れさまでした。