コスタリカだより6 帰る
現在、こちらは24日の昼の2時半。今日の夕方、こちらを出発し、深夜の便で帰路に就く。
金尾君があと3週間残り、調査を続けてくれることになっている。
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一昨日、ようやく良いツノゼミが採れた。これまで採ったことのない属で、たいへんうれしい。幼虫もかっこいい。
また、昨晩は遅くまでバーチェルグンタイアリの引っ越しを観察する機会に恵まれた。このアリの引っ越しでは、大部分の共生者がアリの運ぶ幼虫や繭にくっついていて、見つけるのも困難だし、共生者の採集時に行列を刺激すると引っ越しを中断してしまうので、かなりの技が必要である。
最後の最後にこの採集にも慣れ、昨晩はいろいろなエンマムシやハネカクシを採集することができた。グンタイアリのエンマムシは行動といい形といい、最高に魅力的な甲虫である。
山本君
教え子の山本周平君が甲虫学会で若手奨励賞を受賞した。おめでとう。
山本君は学部1年のときから私の部屋に出入りしていて、現在博士2年生。一番付き合いの長い学生である。がんがんと良い論文を書いている。
こういう賞は博士取得後の中堅研究者に与える学会が多いが、「研究の勢いの良さ」で評価し、まだ学生の山本君に与えるのは素晴らしいことだと思う。これぞ中身のある「奨励」ではないだろうか。
「周平vs.周平」 写真は吉冨さんのブログから借用
コスタリカだより5 爬虫類
イボヨルトカゲ、ドロガメ類、オウムヘビ、マツゲハブ。このほかにフェルデランスという大人でも噛まれると20分で死ぬというヘビを5回ほど見た。大人しいヘビなので、こちらに気づくとすぐに逃げていくが、森に入るには細心の注意を払っている。また、周辺の川にはワニが多く、昨晩もカエルを見に行こうと水たまりに足を踏み入れたら、足もとに子供のワニがいた。川には「泳いでいいけど、ワニに気をつけろ」との表示がある。
コスタリカだより4 カエル
今日はずっと雨なので部屋でぼーっと休みながら写真を現像した。こちらは生き物全般に多いが、雨が多いせいか、とりわけカエルが目につく。とくにアマガエル科が多く、昨日のアカメアマガエルに代表される大型のものから、かなり小さいものまで多様である。
どこにでもいるのは、ユビナガガエル科のナンベイウシガエルである。その次の種のヒキガエルもよく見かける。
そして一番感動したのはヤドクガエルの2種(イチゴとマダラ)である。とくに前者は宿泊所の玄関の前から森の奥まで、いたるところにふつうに見られる。
あるとき、イチゴヤドクガエルを撮影しようと追いかけたら、触ってもいないのに、いきなり死んだふりをした。これには驚いた。
コスタリカだより3
残すところあと5日。3週間はあまりに短い。しかし、ここ数日、見たかったものを見ることができている。
一番見たかったアカメアマガエル。道を歩いていたら、上からボトっと落ちてきた。
金尾君がメキシコエボシツノゼミを見つけてくれた。普通種のようだが、ここはツノゼミ全般に少なく、2週間目にして、今日初めて見つかった。
一見、ただのアリに見えるけど、アリの腹部に見えるのは、実はエンマムシ。この種は腹柄節(アリの見かけの胸部と腹部の間にある節)専門に噛みついて移動する。メキシコグンタイアリの引っ越しの行列だけで見つかる未記載種。ご想像のとおり見つけるのは結構難しい。しかしこのアリの腹部は黄色っぽいので、つやのある黒っぽい腹部のアリを探すと、おのずとこのエンマムシが見つかる。
カンボジア初の好白蟻性ハネカクシ 文藝春秋
卒業生の金尾君の最新論文(博士論文の一部)が出版された。カンボジアから8新種を記載した大変な力作。カンボジア初の好白蟻性ハネカクシの記録ともなった。主にアンコールワット周辺で採集したハネカクシが研究材料となっている。
http://www.mapress.com/zootaxa/2015/f/zt04044p223.pdf
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関係ないけど、最新の文藝春秋に「植物はすごい」の田中修先生との対談が出ている。
ベストセラー対決
昆虫と植物、どっちがすごい? 丸山宗利 田中 修
コスタリカだより2
毎日雨ばかりで、一日の活動時間が少ない。しかし、年齢的に体力があまりないので、雨に強制されて休み休み調査することになり、このような比較的長い滞在にはちょうどよいのかもしれない。
今日は良いものを見た。ビワハゴロモPhrictus quinquepartitusに随伴するカタツムリPittieria aurantiaca。ビワハゴロモが飛ばす甘いオシッコを美味しそうに飲んでいた。
この関係に関する原著論文はこちら。
コスタリカだより
明日からコスタリカなのでいろいろ
先日コガネムシ屋さんがお見えになり、標本を見ていただいた。その際、お土産に貴重なヒゲブトオサムシを頂戴した。こういうのが一番うれしい。おせんべいに次ぐ。
「可愛い教え子」の弘岡君の修士論文がようやく出版されることになった。ここまで直すのが大変だったが、ようやく陽の目を見ることになり、非常にうれしい。(それでも校正が多くて、吉富さんすみません。)共著者のトンプソンさんが古くに記載されたヨーロッパとロシアのタイプ標本の情報をくださったのが非常に助かった。そういうわけで共著にさせていただいた。乞うご期待。
とにかく忙しいので、机のまわりには貴重な標本の未整理のものが溜まる一方。そこでここ数日、茶坊主君に来てもらって、いろいろと標本を作ってもらった。もちろん、タダではない。3割くらいは差し上げた。微小で良い虫は上手にやってくれる。かなり器用とみた。
今日は祝日であるにもかかわらず、展示業者の方にお願いして、糸島の衛星展示を更新してきた。1か所は甲虫の標本を展示してきたが、やっぱり職員の方々の反応がよかった。外国のきれいな虫の魅力にはなかなかかなわないというのは、今年の「きらめく甲虫」で学んだ。
明日からコスタリカなので、これもまた一つすっきりした。
フィリピンのカタゾウムシを続々と入手しており、今回は別の学生に標本をわたして、展足をお願いした。(今日は練習用に普通種。)上手ければどんどんお願いしようと思う。
カタゾウムシといえば、現在、千葉県立中央博物館にて、共催でカタゾウムシの展示をしていただいている。とてもかっこよく展示していただいてうれしい。昔ここで卒論を書いたり、佐倉市の昆虫調査をしたり、とてもお世話になったので、少し恩がえしできたかな・・・。
先日、フィールドの生物学の『湿地帯中毒』と『クモヒメバチ』が届いた。2人とも昔からよく知っているので、おめでたい。生粋の生き物屋とそうでない研究者という対照的な2人でもある。とりあえずクモヒメバチを読んで感想を書かなくては。湿地帯はコスタリカへ持っていく。
中島さんは私が執筆を仲介した。実はこのシリーズでは3人目。本当にフィールドの生物学にふさわしい著者だと思う。