驚異の標本箱 裏話2
キャッチコピーと文章
いずれも私の担当で、必要に応じて撮影担当者のコメントで訂正するという作業で進めた。吉田さんの文章センスがすばらしいので、前書きをふくめ、表現が磨かれた。キャッチコピーに関しては、軽く自画自賛する程度に、なかなかうまいものができたのではないかと思う。良いものを思いついたときには「キタキタ」となる。1点だけ、ハサミムシに関して、最初に「ちんぽきり」(日本での地方名)にしようと思ったのだが、法師人さんに猛烈な反対を受け、あえなく本文にその痕跡をとどめるのみとなった。
文章は虫に興味がない人が読んだときの印象を思い浮かべつつ、虫好きの目線、形態の意味に関して想像を掻き立てるよう書いた。また世界の人に見ていただきたいという思いから、英文も併記した。英文というのはどうしても文字数が多いので、和文の半分程度の内容を訳したが、日本人にしかわからない内容に関しては適宜内容を変更した。最後に英文はカナダの研究者に見ていただいた。一般向けの英文をあまり書いたことがなかったが、これから英文の本も書こうと思っていたので、少し弾みになった。
撮影法
吉田さんが担当した。実はこの本の隠れた目玉の一つではないかとも思う。普通、写真集でわざわざ撮影法を解説することはない。しかし、本書を手に取った人の大部分は、「どうやって撮影したのだろうか?」という疑問を持つに違いないと思い、あえて見開きを割いた。著者3人とも撮影法は違っていて、吉田さんはベローズに顕微鏡の対物レンズを付けて使っているが、私はキャノン7D MarkIIに望遠マクロ(EF180mm F3.5L マクロ USM)の先端に顕微鏡の対物レンズ(ミツトヨ M Plan Apoの5, 10, 20X)を付けて、エクステンションチューブ(ケンコー)で倍率を調整している。法師人さんについては謎としておく。
もちろん、道具があればだれでも撮影できるわけではないと思う。「その先」にたどり着くのは結構時間を要する。
つづく