断虫亭日乗

過ぎ去る日々の思い出をつづるだけ

CombineZPとZereneの比較(メモ)

ここ数カ月は展示や本の関係で昆虫体表面の微細構造の撮影に凝りに凝った。そこで重要になるのが深度合成のソフトである。

これまでCombineZPを使っていたが、Zerene Stackerが高評とのことで、導入してみた。Zerene Stackerは毛の重なりが上手く合成できるうえ、ソフト上でレタッチ(元写真の良いところを拾える)ができるのが何よりの利点である。

ただ、Zereneも完璧ではなく、レタッチ不要な画像の仕上がりにおいては、CombineZPのほうが優秀な点も多い。とくに反射の大きな甲虫やチョウの鱗粉などは、圧倒的にCombineZPに軍配が上がる。

以下、カタゾウムシの体表面で比較してみた。

(実際にやってみた人向きの内容。)

 

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CombineZP:わずかに鱗毛の反射を拾っているが、鱗毛の間の微細彫刻もうまく合成されており、メリハリがある。

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Zerene PMax:どう設定しても使いものにならない。鱗毛の間が完全にボケており、合成もされていない。

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Zerene DMapのデフォルト:ご覧のとおり、全然ダメ。

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Zerene DMapで、設定のEstimation Radiusを90程度に上げてみた:かなり改善され、多少ボケているが、十分に使える。ちなみにデフォルトのEstimation Radiusは10

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Zerene DMapで、設定のEstimation Radiusを最大値の100に上げてみた:さらにきれいに。ただし、Combineほど精密に合成はされていない。上手くいっていない部分をレタッチすればきれいになるが、大変な労力である。表面の合成の精度をこのへんで妥協し、毛の重なりの利点を取るというのも手であろう。

結果として、平面的な表面構造に関しては、(実は)いろいろなものを撮影してみたが、CombineZPが一番手堅いという印象を持った。CombineZPの動かせない人はZereneのDMapで合成し、レタッチやフォトショップでがんばる。

次に立体感のあるものはどうだろうか。おそらくこういうのがいちばん一般的な被写体だろう。そこで、極端に立体的なツノゼミで比較してみた。

 

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CombineZP:角の重なりがうまく合成できていないほか、角の側縁の光沢部のハレーションを拾っている。これは元写真にも多少あり、合成の過程で強調されてしまったのものである。ハレーションの強調はCombineZPで起きやすい現象である。

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Zerene Pmax:角の重なりは「だけ」は上手くいっているが、あとはボケているし、汚い。

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Zerene DMapのデフォルト:角の表面構造の合成はだいたいうまくいっているが、できていない部分もある。ただ、側縁部のハレーションはないし、角の重なりもまあまあできている(レタッチは必要)。ただ、カタゾウムシの表面構造同様、全体にもやもやしていて、周囲にゴーストができている。

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Zerene DMapのEstimation Radius 100:驚いた。合成出来ている部分はきれいだが、立体感のある部分(傾斜のある部分)はまったく合成出来ていない。

結論として、立体感のあり、かつ構造の重なりのある虫については、ZereneのDMapのデフォルトで合成し、レタッチするとともに、モヤモヤを誤魔化すために写真を少し暗くし、コントラストを上げるのが一番かもしれない。側縁に光沢がなく、構造の重なりが少なければ、CombineZPで一発で決まることが多い。

なお、光沢が少なく、短毛に覆われた虫は、「非常に簡単」で、どのソフトでも合成能力自体の違いはあまりない。合成の際にピントの合っている部分だけを拾いやすいのだろう。ただ、色あいはかなり変わる。

逆に長い毛に覆われたものは、さきほど述べたように、Zereneのほうが上手くいくことが多い。

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CombineZP:元の写真の良いところを忠実に拾っているが、コントラストがちょっと強い傾向にある。

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Zerene PMax:彩度が下がり、少し暗くなる。

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Zerene DMap:デフォルトなので、やはりちょっとモヤモヤが残る。

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以上、3つの撮影対象で比較したが、被写体の性質によってかなり使い方が変わる。Zereneも万能ではないし、CombineZPもまだまだ捨てがたい。

設定に関してはまだすべて変えて試しているわけではないので、他に設定変更すべき点があれば、ご教示いただければ幸いである。