断虫亭日乗

過ぎ去る日々の思い出をつづるだけ

畑近況

今日は朝早く大学に行って、午後から河野君と胎児中君に実験を指導し、涼しくなる夕方から畑に出かけた。
サトイモは暑いのが大好きなのか、すこぶる元気。
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トマトは湿気と酷暑で不調だが、そこそこ実がなっている。
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ピーマンとシシトウは先月半ばまではかなり収穫があり、頑張ってくれたけど、小休止といったところ。秋にまた沢山成るのだろうか。
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インゲンは終わり。何キロも収穫できた。
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オクラは最盛期。10本も植えたので、たくさん成るのだが、1週間おきにしか畑に行けず、オクラの実の成長に追いつけないので、毎回食べごろのものは多くない。
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サツマイモは元気。ちゃんとイモが成長しているのかは不明。
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ゴーヤーはようやく実が成り始めた。
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ジャガイモの跡に植えたエダマメ。少しずつ収穫できるように、種まきの時期をずらした。
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ラッカセイも繁茂している。地下で実っていることを祈る。
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糸島市の昆虫教室

7月30日は糸島市の昆虫採集教室だった。23名の参加者があり、まずは山で採集。いつも行く森は、最初の年(5年前)は全員カブトムシが採れたのだが、年々採れなくなり、今年は全員でクワガタ5頭程度だった。それから志摩歴史資料館で標本作製。5人で教えるのはけっこう大変。セミ教室でも思ったが、こういう手とり足とり教えるのは、1人に子供3人が適当な数である。

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東京へ

 月曜日の夕方から東京へ出かけていた。その夜は東大博物館の矢後さんとカハクの神保くん、メレ子さん、それに久しぶりに会う教え子のボスレーと飲んだ。
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 火曜日は午前中に出版社で打ち合わせがあって、夕方にジュンク堂で講演会があった。新刊の「きらめく甲虫」に関するもので、盛況だった。
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  なお、ジュンク堂池袋店では鈴木海花さんの「大昆虫展」がひらかれており、わたしも選書に参加させていただいた。
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 講演会の後に出版社関係の皆さんと打ち上げ。もともと風邪気味だったのだが、講演で喉を傷めて、それに追い打ちをかけるように飲み会で傷めた。
 今日は午前中に新聞の取材があって、幻冬舎の前田さんと築地へ。朝からまったく声がでないので、しばしば前田さんに通訳してもらった。
 取材後に布恒更科で「冷やし すだちそば」。味も見た目も涼しかった。一緒に頼んだ「白えびの天ぷら」もなかなか。
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ヴィ〜ナス

すごい新種の発見。

昨年夏に「ダーウィンが来た」の取材でカンボジアに行った際、毎日の昼休みに茶坊主こと柿添翔太郎君と採集した。撮影中は彼は独りで採集していた。

ある日、こちらが取材しているとき、彼から電話で「すごいものを見つけてしまいました」と震えた声で報告があった。わざわざ電話するなという声を呑み込んでその内容を尋ねると、「まさか」としか思えないものだった。

ホテルで落ち合い、実物を見たときには、驚きと悔しさのあまり色を失った。数年前に私が同じ場所で同属の新種、Termitotrox cupidoを発見し、世界最小のコガネムシとしてちょっとした話題になったのだが、本種はより大型で非常にかっこいい。しかも茶坊主は、私が散々調べたシロアリの巣で、私の不注意で見過ごしていた微環境で発見していた。完敗というほかなかった。

cupido同所的(シロアリ寄主は異なる)に見つかったので、古来よりクピド(キューピッド)一緒に描かれることが多いウェヌス(ヴィーナス)の存在を思いつき、本種にはvenusと命名した次第である。

雑誌のプレスリリース: http://www.eurekalert.org/pub_releases/2015-07/pp-lca071515.php

原著論文: http://zookeys.pensoft.net/articles.php?id=5672

 

近著のお知らせ 「アリのくらしに大接近」と「アリの巣のお客さん」

あかね書房から「アリのくらしに大接近」と「アリの巣のお客さん」という、それぞれアリと好蟻性昆虫に関する写真絵本が出版されます。

私(と編集の本郷さん)が文章、小松 貴と島田 拓が写真を担当しています。 絵本とはいっても、少し大人向けで、小学校高学年以上から大人まで楽しめる内容になっております。

とくに「アリのくらしに大接近」は未発表の変わったアリの写真がいっぱいで、虫に興味のある方なら、どなたでも楽しめます。「アリの巣のお客さん」も、「アリの巣の生きもの図鑑」に掲載されていない写真や新しい場面がたくさんあります。

 

また、8月8日にジュンク堂で関連する講演を行います。「きらめく甲虫」か、これらの本のどれかを購入していただければ、お聞きいただけます。福岡にお住まいで、これからご購入の方は、ぜひジュンク堂福岡店にてご注文をお願いします。

丸山宗利先生 新刊発売記念講演会 「きれいな甲虫 おもしろい昆虫」|ジュンク堂書店 福岡店|イベント・フェア詳細 |丸善&ジュンク堂ネットストア

 

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「きらめく甲虫」のできるまで

7月8日に発売開始した『きらめく甲虫』。甲虫の本はたくさんあるので、売れ行きに一抹の不安を抱えていたが、おかげさまで大変好調で、嬉しいことである。ネット書店では『昆虫はすごい』よりも売れているようで、とてもびっくりしている。みなさん、ありがとうございます。

各所で評価もいただいており、とくに堀川大樹さんにHONZで紹介いただいたり、メレ山メレ子さんに人気ブログでご紹介いただいたのはありがたい。

honz.jp

mereco.hatenadiary.com

そもそもは『ツノゼミ ありえない虫』でお世話になった幻冬舎の前田さんから、「またなにか虫の本を作ろう」とご提案いただき、話しは始まった。最初は変わった甲虫を集めた本にしようという案で進んでいたのだが、標本集めがなかなか進まず、昨年の冬に集まったときに「とりあえずきれいな甲虫、とくにキラキラのものだけを集めて本にしましょう」ということで話しがまとまった。

メレ子さんも書いているけれど、ちょうどその少し前に『世界一美しい昆虫図鑑』という本を本屋で見かけて、触角や脚をもぎとって並べている様子に少し違和感を覚えた*1。アカの他人の本なんてはっきり言ってどうでもいいのだけれど、「自然の美というものをわかっていないなぁ」などと思った。

もちろんこの本をばかりを意識したわけではないけど、この本のおかげで、「作りもの」ではなく、「甲虫の本当の美しさを全面に出したものにしよう」と思ったことは確かである。

企画が通って、まず標本を集める*2ことから始めた。「美しい甲虫」というくくりで集め始めると、はっきりいってキリがないし、どこにでもある本になってしまう。そこで私は、金属光沢のあるものに絞り、しかも「一般の人、とくに虫にそんなに興味がないけど、そういう人がみてもきれいだろうな」と思う虫を集めるようにした。実はこれまでの展示経験で、なんとなくその傾向がみえていた。たとえばホウセキゾウムシなんて、虫屋に大人気という虫ではないけれど、一般の人がその美しさに驚いている様子を何度も見てきた。大型のクワガタやカブトムシにも金属光沢のあるものはいるが、それらはいろんな本にすでに掲載されているので、あえて避けた。

それと条件としては、1見開きで一つの属や族をまとめることとしたので、ある程度の種数が集まる分類群であることである。1つの見開きに遠縁の虫が混じっていると、どうしてもごちゃごちゃとした雰囲気になってしまう。1つの見開きでは統一感を出したかった。そうすると種の違いや個体差というものがよくわかって、かえって種や個体の多様性というものがよく実感できるのである。

結局のところ、私の独断で集めることになったのだが、結果的に良い選定になったかと思う。一つだけ心残りがあるとすれば、南米のきれいなカメノコハムシ類を載せられなかったことである。ページ数の縛りがあって、これを載せるのであれば、カミキリを1見開き削らなくてはならなかった。

それから撮影ということになるが、本格撮影開始の前に数ページ分の写真を送り、仮デザインを見ながら、編集の方々と相談した。こういう虫屋でない人たちが撮影以外のすべてを担った。これも虫好きばかりではない一般目線の本にするためにはよかった。ここで大まかなページ割や撮影枚数などが決まった。

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撮影の前に、標本の整形(展脚)という問題があった。撮影する時間はなんとかあっても、なかなかそれをする時間がないし、根気もない。そこで、多摩美の学生さんで、ものすごく展脚の上手い福井君をお招きし、数日間泊りこんでもらい、徹底的に展脚をしてもらった。さらに、これもまた大変な作業なのだが、九大の学生さんをアルバイトに雇い、標本の清掃をしてもらった。

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撮影はもちろん得意の深度合成撮影である。他人様の本を引き合いに出すつもりはないが、多くの昆虫関係書籍と同じような写真にはしたくなかった。全体に光がまわったような(同定のための)模範的かつ図鑑的な写真表現を忘れることにして、「色」と「立体感」に徹底的にこだわった。意図的にアンダーな部分、ハイライトの部分を作って、色を強調しすぎず、本来の質感や立体感を出すように努力した。

たとえばテイオウニジダイコクコガネを例に説明すると、左が本書で使った写真で、右がボツ写真である(角度は少し違うけど)。どちらも色調整等は一切しておらず、光の当て方を変えただけである。右はこれまでの図鑑によくある写真で、全体に光をまわしている。右はこれだけ見れば良いと思ってしまうけれど、色味が甘いし、本来のツヤがあまりないし、立体感に欠ける。この種のように、光の当て方によって色が変わる虫にも、やっぱり「一番良い色」、「一番自然な色」というものがあって、立体感はもちろん、色味の点でも左のほうが圧倒的に良いと思うのである。

 

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相手は1~3センチメートル前後が主体の虫であり、撮影はなかなか思うようにはいかない。分類群ごとに撮影の方法決めるのにかなり時間をかけたうえ、場合によっては種ごとに少しずつ光の当て方を変えた。さらに、このように分類群や標本ごとに撮影法を変えつつも、本全体では統一的な仕上がりになるようにした。もちろん完璧な写真などとは思っておらず、もっと良い写真も可能かもしれないし、虫の標本を普段から撮影している人にしてみれば、ちょっと変わった写真だと思うかもしれない。

ちなみに一番たいへんだったのは「プラチナコガネ」のなかまである。これはパチンコ玉みたいな虫で、金属そのものの色をしている。つまりまわりの風景をすべて写し込んでしまうのが「自然」であって、本来はカメラと撮影者と部屋の様子が写り込んでいるのが「正しい写真」なのかもしれない。しかしそういうわけにもいかないので、ハイライトをしっかり作りつつ、カメラの写り込みを最小限にとどめ、ツルツルの質感も出すようにした。これだけで何十枚試作品を作ったかわからない。これについては本当の意味での自然な色というのは無理なので、あくまで自分の理想、「もし写り込みがなかったら、こうだろうな」という姿を写真に収めるようにした。

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撮影を進めつつ、編集作業も始まった。鷹觜さんという方が本の全体をデザインしたのだが、これがまたかっこいい。なんというか、キリっとしている。装飾的な表現は避け、虫の自然な魅力が引き立つものにしていただけたと思う。そしてネイチャー&サイエンスの佐藤さんが本書中の解説や手書き文字を書いてくださった。佐藤さんの文章は親しみやすくていいと思う。(もちろん私も書いているのだが、分担の内容については内緒にしておく。佐藤さんは私の依怙地なカタカナ語嫌いにもついてきてくださった。)そして幻冬舎の前田さんが全体的な校正やさまざまな改善案を出してくださった。

実は印刷前に「色校正」という大事な作業があるのだが、その作業は私がアフリカで遊んでいる間に行われたので、あまりお役に立てなかった。印刷会社の方々と編集のみなさんでいろいろと苦労していただいたようだ。おかげで元の写真の良いところがきっちり再現された印刷となった。

最後にページ見本を。一番上の数枚がプラチナコガネのなかまだが、「金属感」が出ているでしょうか。

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*1:写真を不自然に色調整しまくっているうえ、ボケボケということは置いておいても

*2:実はここでかなりお金を使ったので、本書が売れても私が儲かることはほとんどありません。2刷までいくとかなり助かります。

さらにさらに

今日は糸島で行われる哺乳類の展示の搬出作業。あいにくの大雨で、剥製の大敵である湿り気に気を付けながらの作業となった。夕方から哺乳類の本を調べつつ、解説を書く。そのときに改めて感じたのだが、本来は「サル」や「ウサギ」で通じていたものを「ニホンザル」や「ニホンノウサギ」などとするのは、おかしなことだ。親しみある生物の名前をわざわざ堅苦しい学術的な和名にしてしまうのは、和名というものの持つ本来の意味(一般の人々の利用)を半減させるものであり、研究者の自己満足でしかない。とくにサルなんて日本全国に1種しかいないのだから、サルといえばサルであり、外国のサルに形容詞なり付ければいい話ではないか。
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さらなる

久留米で開かれる展示資料の貸し出しや、NHKの北九州支所で行うツノゼミの展示の準備。いい加減疲れました。
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ゴミダマの安藤さんがお見えになり、夜は美味しいものをたくさん食べた。
オコゼのお造りが最高だった。
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