コスタリカだより2
毎日雨ばかりで、一日の活動時間が少ない。しかし、年齢的に体力があまりないので、雨に強制されて休み休み調査することになり、このような比較的長い滞在にはちょうどよいのかもしれない。
今日は良いものを見た。ビワハゴロモPhrictus quinquepartitusに随伴するカタツムリPittieria aurantiaca。ビワハゴロモが飛ばす甘いオシッコを美味しそうに飲んでいた。
この関係に関する原著論文はこちら。
コスタリカだより
明日からコスタリカなのでいろいろ
先日コガネムシ屋さんがお見えになり、標本を見ていただいた。その際、お土産に貴重なヒゲブトオサムシを頂戴した。こういうのが一番うれしい。おせんべいに次ぐ。
「可愛い教え子」の弘岡君の修士論文がようやく出版されることになった。ここまで直すのが大変だったが、ようやく陽の目を見ることになり、非常にうれしい。(それでも校正が多くて、吉富さんすみません。)共著者のトンプソンさんが古くに記載されたヨーロッパとロシアのタイプ標本の情報をくださったのが非常に助かった。そういうわけで共著にさせていただいた。乞うご期待。
とにかく忙しいので、机のまわりには貴重な標本の未整理のものが溜まる一方。そこでここ数日、茶坊主君に来てもらって、いろいろと標本を作ってもらった。もちろん、タダではない。3割くらいは差し上げた。微小で良い虫は上手にやってくれる。かなり器用とみた。
今日は祝日であるにもかかわらず、展示業者の方にお願いして、糸島の衛星展示を更新してきた。1か所は甲虫の標本を展示してきたが、やっぱり職員の方々の反応がよかった。外国のきれいな虫の魅力にはなかなかかなわないというのは、今年の「きらめく甲虫」で学んだ。
明日からコスタリカなので、これもまた一つすっきりした。
フィリピンのカタゾウムシを続々と入手しており、今回は別の学生に標本をわたして、展足をお願いした。(今日は練習用に普通種。)上手ければどんどんお願いしようと思う。
カタゾウムシといえば、現在、千葉県立中央博物館にて、共催でカタゾウムシの展示をしていただいている。とてもかっこよく展示していただいてうれしい。昔ここで卒論を書いたり、佐倉市の昆虫調査をしたり、とてもお世話になったので、少し恩がえしできたかな・・・。
先日、フィールドの生物学の『湿地帯中毒』と『クモヒメバチ』が届いた。2人とも昔からよく知っているので、おめでたい。生粋の生き物屋とそうでない研究者という対照的な2人でもある。とりあえずクモヒメバチを読んで感想を書かなくては。湿地帯はコスタリカへ持っていく。
中島さんは私が執筆を仲介した。実はこのシリーズでは3人目。本当にフィールドの生物学にふさわしい著者だと思う。
疲れ気味
空港展示
情熱大陸 その後
今日は本当に久しぶりの雨。秋でカラっとした天気は気持ちの良いものだったけれど、家庭菜園にとっては恵みの雨。タマネギも安心。
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来週に長期遠征(コスタリカ)を控え、気ぜわしい。しかしながら、先日の「情熱大陸」について、記憶の新鮮なうちにひとつ書いておきたい。これを読んでから再び番組を見ると少し面白いかもしれない。
7月くらいにディレクターの小林潤子さんから連絡があり、出演の依頼があった。そして、すぐにその小林さんとプロデューサーの新津聡子さんが福岡にお見えになり、打ち合わせとなった。驚くべきことに、その新津さんは、私が昔から知っていた蛾屋の新津さんの妹さんだった。もちろんこれは偶然。
それから7月末になって、東京での飲み会、講演会など、さっそく密着取材が始まった。福岡でもセミの教室の取材があり、そして8月のタイでの野外調査の取材があった。福岡以降のカメラマンは桜田仁さんという方である。合計3週間の密着で、これは近年の「情熱大陸」では異例の長さだそうだ。
結局、カオヤイ国立公園での取材が一番面白いということで、それ以外の内容は大幅にカットとなった。
カオヤイではひたすらに地面を見て歩くという私の野外調査を密着していただいたのだが、これが大変申し訳なかった。文字通り地面を見て歩くだけなので、カメラマンの桜田さんは常に私の横や後ろ、ときに前を黙々と撮影してまわるほかなかく、「これまでで一番きつい」とおっしゃっていた。いつどこでヒメサスライアリが見つかるかわからないので、常に写しておかないといけないということもある。しかも虫を写すのは難しいときている。
それから帰国して、ハネカクシの解剖の撮影となった。当初これは軽く撮影する予定だったのだが、小林さんや桜田さんからするととても面白かったようで、大掛かりな装置を福岡の業者で借りて撮影することになった。私の顕微鏡に合う装置を探していただくのに苦労されたようだ。
それと、タイの調査の前後は、ひたすらに毎日、中洲の居酒屋へ行き、インタビュー攻めだった。答えるのが難しい疑問をいろいろとぶつけてくださったので、正直言って頭が疲れたが、考えもしないようなことを言葉にする訓練となり、今思うとこれは大変勉強になった。そういえば、タイでも毎日ようにインタビューがあった。
こんな感じで取材終了。小林さんと桜田さんとは、これまでどんな友達とも過ごしたことがないくらい、みっちりと長い時間を一緒に過ごし、お互いの私的なことをほとんど出し切ったと言っていいくらいに話した。そして、最後には別れが惜しいくらいの関係になった。きっとこれからも折々東京で飲むだろう。
ちなみに小林さんが私を選んだきっかけは、「アリの巣をめぐる冒険」で、「昆虫はすごい」はきっかけにすぎなかったとのこと。「アリの巣をめぐる冒険」は私にとって一番愛着のある本なので、これは嬉しかった。小林さんも桜田さんも愛すべき人たちで、こういう嬉しいことがいっぱいあった取材でもあった。
タマネギ植え付け 捕虫用蛍光灯
今日は事前に予約しておいたタマネギの苗を買って、植えつけた。写真を撮るのを忘れた。このところ雨がなかなか降らず、かといって頻繁に水をやりに行けないので、根付くのか不安である。
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新しく導入することにした灯火採集の光源。台湾に行ったときに当地の学生(梁君)が使っていて、虫の集まりがかなり良かったので、真似してみた。12ボルトの捕虫用蛍光灯で20ワット相当の明るさ。5時間ほど持つようだ。
これ単体でも十分だが、最近ではHIDをよく使っているので、それと併用する予定。
紫外線LEDも選択肢としてあるが、波長の範囲が狭く、効果は蛍光灯よりずっと劣る(数はもちろん、集まる虫が限られる印象)ので、大事な遠征にはまだまだ採用できない。こんなに大袈裟でなく、虫がたくさん集まるものがあればいいのだが。
五島列島の中通島へ
台湾から戻って研究に本格復帰と思っていたが、忙しくてなかなか手があかない。
22日と23日は1泊で五島列島の中通島の鯛之浦教会へ行ってきた。6年前に当館に700箱の標本を寄贈してくださった烏山神父が新たに200箱を寄贈してくださることになり、トラックを借りて、フェリーで引き取りにうかがってきた。
(狭い道があって、トラックの坂道バック発進で坂の下に落ちそうになったりして、運転にヒヤヒヤした旅であった。)
素晴らしい内容で、展示にすぐに使えそうなものばかり。本当にありがたい。
畑日誌
2週間ぶりの畑にでかけた。涼しい日が続いているが、野菜の生育は順調である。
スティックセニョール(ブロッコリー)は収穫間近。
ブロッコリー、カリフラワー、メキャベツ。
レタスは順調。
ゴボウ。キク科らしい雰囲気。
サトイモは来週収穫。
ダイコンは害虫の峠を越えて復活した。
サツマイモ。
立派なイモができていた。
ラッカセイ。アライグマが頑張ってほじくり出そうとした痕跡がある。
まずます。
ニンジンの畝の半分にサツマイモの蔓がかぶさって枯れてしまったので、そこにミズナの自家製苗を植えた。
今日の畑の様子。
蘭嶼の寶石
10月8日から14日まで台湾に出かけていた。9-11日は蘭嶼(前後は移動で、採集は1日のみ)、12-15日は阿里山と鹿谷郷というところに滞在した。ツノゼミが目的だったのだが、どうにもふるわず。
蘭嶼でカタゾウムシやカタゾウカミキリを見ることができたのは収穫だった。しかしカタゾウムシは保護昆虫につき採集せずにお別れした。
それにしても、蘭嶼のカタゾウムシはどれも本当にきれいで感動した。5種が生息しており、どれも美しい紋や筋の模様がある。(それに比べて日本のは全身真っ黒で、残念としか言いようがない。)
ところで蘭嶼のカタゾウムシ5種は、島内で種分化したわけではない。カタゾウムシの分布の中心はフィリピンにあり、フィリピンの島々で激しく種分化している。蘭嶼の種は、それぞれフィリピンに近縁種がおり、それぞれの祖先が個別に、海流に乗って蘭嶼に流れ着いたようだ。
5種のうち4種は、青緑色の紋を持つという共通の傾向を持つ。おそらく、ミューラー型擬態の意味を持つのであろう。しかし、1種(右上)だけは白い紋を持っている。もしかしたらこの種の祖先は比較的最近流れ着いたのかもしれないし、この種だけが持つ生態的特徴を反映しているのかもれない。台湾の研究者が現在、フィリピン北部の離島のカタゾウムシを採集し、DNA解析から蘭嶼のカタゾウムシの起源を探ろうとしている。結果が楽しみである。
ちなみにカタゾウムシ5種はそれぞれに異なる植物を寄主としており、全種を1日で採集するのはかなり難しい。今回は台湾師範大学の学生さんの案内で、首尾よく探すことができた。
また、珍種のカタゾウカミキリを2頭も見つけることができたが、これは非常な幸運だった。フィリピンのカタゾウカミキリの大半は、特定の種のカタゾウムシに擬態している。しかし、蘭嶼の種は、5種のカタゾウムシのどれにも似ていない。これについてはいくつか考えがあって、まずはこの中途半端な模様が、どのカタゾウムシへの擬態効果もあるということ。つまり蘭嶼の捕食者(トカゲや鳥)が「カタゾウムシ全般に持つ印象」を体現しているのかもしれない。あるいは、狭い島である蘭嶼にはフィリピンほど捕食者が多くないか、「頭のよい」捕食者がいないので、それほど厳密に擬態する必要がない(捕食者による厳しい淘汰がない)のかもしれない。さらにこれも比較的最近流れ着いて、まだ擬態進化の途上にあるとも考えられる。(ちなみにフィリピンのルソン島にも、D. eldanoiというこの種によく似たカタゾウカミキリで、当地のどのカタゾウムシにも似ていないものがいる。)
Pachyrhynchus (= Pachyrrhynchus) and Doliops of Lanyu.
Pachyrhynchus tobafolius
Pachyrhynchus sarcitis kotoensis
Pachyrhynchus monilliferus sonani
Pachyrhynchus nobilis yamianus
Pachyrhynchus chlorites insularis
カタゾウムシについては、それぞれ亜種ではなく、独立種としていいのではないかと、私は思っている。
Doliops similis