断虫亭日乗

過ぎ去る日々の思い出をつづるだけ

今日はタロー君とPalos Forest Reserveへ採集に出かけた。9:30にRoosevelt駅で待ち合わせし、10時過ぎにMidway駅に到着、40分ほど時間をつぶしてそこからバスに乗り、Palos Forest Reserve最寄のバス停に着いたのは11:30だった。そこから採集をしながら森を目指す。

あちこちに湿地があり、タロー君は地道にハネカクシを採集している。森のほうから大きなざわめきのようにジュウシチネンゼミの声が響いてくるのに気付いた。湿地が途切れ、木が増えは始めたあたりから、セミが姿を現した。それから少し進むと、見渡す限りの木々と下草の表面をセミが覆っていた。想像以上の数だ。

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今年はイリノイインディアナ周辺が発生地で、Magicicada septendecimM. cassiniM. septendeculaという3種のセミが出現している。シカゴ周辺にはMagicicada septendecimM. cassiniの2種のみが発生し、前者は大型(ヒグラシを一回り大きくした程度)で腹部に黄色い縞があり、後者は小型(ツクツクホウシを一回り大きくした程度)で腹部が真っ黒い。写真は大きいほう。

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驚いたのはセミの異常なまでの鈍さ。手でつまんでもほとんど逃げないし、飛ぶのも非常にゆっくりである。これだけ仲間がいれば、自分が捕食される可能性は非常に低いわけだから、短い大人の時間をのんびりと過ごすことができるということだろう。

地面には幼虫の出た跡である無数の穴が開いているが、道の脇に転がっている朽木を起こすと出番待ちの幼虫がまだたくさんいる。これでも最盛期ではないのだ。

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13時過ぎにようやく森へ入る。季節の進行は著しく、前回は芽が出たばかりだった野生のネギAllium canadenseはすでに花が満開で、あれほどいたツノゼミは完全に姿を消していた。好蟻性昆虫には遅かったかと心配したが、アメイロケアリの巣から先日と同じ好蟻性のアリヅカムシCeophyllus monillisは得ることができた。ただしこれはアメリカ北東部では最普通種のアリヅカムシだそうだ。

朽木や石を起こしていくとサンショウウオAmbystoma texanumも出てきた。アメリカ固有のグループで、イリノイだけで10種近くがいるようだ。

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今日の主目的もXenodusaという好蟻性ハネカクシだったのだが、良いオオアリの巣にめぐりあえず、残念ながら見つからずじまいだった。秋に賭けたいと思う。もう一つの目的は先日採集したルリクワガタの行動や生息環境を詳しく知ることだったのだが、こちらのほうは大成功だった。もちろん専門外だが、先日の中途半端な観察から考察した内容が当たっているのか知りたかった。

他にもいろいろな虫に出会えたが、気に入ったものを二つ挙げて写真はお終いにする。一つはBolitotherus cornutumというゴミムシダマシで、比較的大型なうえに雄の角が見事である。もう一つは朽木の樹皮下に花粉を溜めて産卵するAugochlorini族のコハナバチで、寒い地方のハチとは思えない美しさである。

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行き帰りのバスのなかでタロー君といろいろ話したのだが、ハネカクシ全般についてよく知っているのには驚いた。しかも昨年の夏からハネカクシに興味を持ち、文献を読み始めたそうだ。日本の学部生にもがんばってほしい。また昨年受講したという系統学の授業の話しにも驚いた。Genebankや論文から塩基配列と形質行列を拾ってきて、独自にアライメントや解析をし直すというのがレポートの内容だそうだ。やはりアメリカの授業はすごいとしか言いようがない。

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今日は写真が多いので、マレーシアの写真はお休みです。