本、本
げっちょ先生に「昆虫の描き方」をいただいた。題名の通り、昆虫の絵を描く方法について細かく説明されているのだが、それぞれの昆虫やその生態についての解説が非常に面白い。おすすめの一冊。
「ミミズ図鑑」もすばらしい。身近な大型の生物でありながら、ミミズほど名前のわからないものはいないだろう。非常に未記載種が多いそうで、日本産種の1割程度しか載っていないと書いてあるが、人里の普通種については十分に同定できそうである。とにかく画期的な図鑑。
「稚魚図鑑」もいただいた。「魚類検索」に続く、東海大出版の大仕事である。魚類の形態的多様性はすばらしいが、稚魚はもっとすごい(逆に稚魚だとみんな同じような姿のものも少なくない)。美しい図を見るだけでも十分な図鑑といえる。
むねとしの森
校了に近づいた。99%校了。
大手だけあって、校閲部の人が見てくれるのだが、とにかく細かい。虫の名前も全部調べてくれる。でも、その前に、講談社で校閲をやっていただいた本郷さんに見ていただいたので、校閲部の精鋭が見直しても、大きな間違いはほとんどないという素晴らしさ。本当にありがたいことです。
忙しさにかまけて放置していた水槽だったけど、コイ科のTorやナマズのClariusが大きくなってきたので、もう1本水槽を準備して、Rasbora elegansと一緒にそこに移した。背景に100円ショップで買ったスダレを取り付けた。落ち着いた雰囲気で、結構かっこいい。
廊下でその水槽の台を組み立てていたら、見知らぬ女の子が話しかけてきた。そして、「これ自分でイノシシ解体して作ったんです」とかっこいいバッグを見せてくれた。「ちはるの森」の人だった。
前から「ちはるの森」は知っていたので、まさかこんなところで会えるとは思わなかった。
時計の電池がなくなったので、駅前の時計店にいったら、臨時休業で電池交換できなかった。それで今日は、一日中、ひどく遅れている時計をしていたのだけど、それを無意識で見て、信用してしまい、いろいろと時間を間違えて酷い目にあった。間違った時計ははずしたほうがいいと学んだ。
天使を展翅
チェンマイから生のままビワハゴロモを持ってきたので、急いで展翅した。
その前に、前回の旅行でゲンカチャンで採集したビワハゴロモも展翅板から外した。
チェンマイでは3種採れた。
Westwood (1843)のArcana Entomologicaのヒゲブトオサムシの論文と手彩色の図版を入手した。博物画はかっこいい。意味もなく花があるのもいい。
裏山の奇人 野にたゆたう博物学 予約開始
アマゾンで予約が始まったようだ。買ってやってください。
現実社会
朝一番で帰国。さっそく仕事を開始する。虫は今一つだったが、楽しい旅行だった。タイはやっぱり良い。人々がいい。住みたい。食べ物がおいしい。しかし、そのぶん太りそうで怖い。
午前中から志摩歴史資料館で行われる蝶と蛾の展示の搬出作業を行った。先方の3名のか、矢田先生とボランティアの宮さんにお手伝いいただいて助かった。
それから本の校正作業・・・。細かい訂正はキリがないので、やめることにする。大手出版社なので校閲部の赤が入っていることもあり(事前に本郷さんに見ていただいたので、ほとんど訂正はなかった)、あとは好みの問題かもしれない。
そのほか、午後に会議があった。箱崎キャンパスの一部が移転に伴い、年末に更地になることになり、その予定地にある収蔵物の移動先に関するものである。しばらくは残る歴史的な建物の一部に移すことになっており、年末には少し慌ただしくなりそうだ。
谿間にて
昨日の夕方から、チェンライの山奥に入った。
昼ごろにドイステープを下り、市内でおろしてもらい、そこでタクシーに乗り換え、チェンライの小学校の駐車場へ。そこで採集人の方のハイラックスに乗り換えて、1時間弱、ものすごい山奥の谷間の村に到着した。
国立公園のなかにある非保護区で、見渡す限り森におおわれている。
早速、小松君と歩くが、時期と天気が悪いせいで、ほとんど虫が見つからない。キノコシロアリの菌園を掘りだしても、ほとんど共生者がいなかった。この時点で、2人とも成果は見込めないだろうと見限った。
前回と今回の旅行で強く実感したのだが、インドシナでは(少なくともタイでは)、小甲虫類を中心とした「雑多な虫」の大半は4月から5月が良い。ツノゼミは乾季に限る。採集人の方も、この時期になるともう虫がいないとおっしゃっていた。
夜は土砂降りのなかベランダで水銀灯を焚いてくれた。さすが見渡す限りの森だけのことはあって、悪条件のなか、多数の蛾が飛来した。
ーーー
朝から豪華な料理をいただき、9時過ぎに森に向かう。恐ろしい悪路を車で進む。雨になると帰れなくなるとのことで、採集人の方は車を家に戻しに行ってしまった。
その間、息子のボン君が案内してくれた。
小松君がアオハブを見つける。どこの国へ行っても、山に暮らす人々は非常に毒ヘビを恐れる。ここも例外ではなく、撮影中もボン君が石をぶつけようとしており、制止するのに苦労した。戻って来たお父さんにも、近づいちゃダメだと注意された。
昨晩、このあたりにいる虫の標本をいくつか見せてもらい、今日の目的をビワハゴロモに定めた。昔から憧れていたPyrops clavatusがたくさんおり、素晴らしい光景だった。
昨晩飲んだお茶のせいで一睡もできなかった小松君も、喜んで撮影していた。
これは私が撮影した写真。
小雨になったり少し晴れたり、落ち着かない天気だった。とにかく素晴らしい場所。(たぶん、遠くの深い森は国立公園内だろう。)ボン君と。
もうすぐ帰国
今日で調査は最後。今晩、いくつか追加採集をして終わり。明日、FITを回収して、早々に町に戻り、明日は別の場所に1泊だけする。
成果は目標の2割といったところ。今日、ようやくヒメサスライアリが見つかったが、引っ越しは見られなかった。しかし、小松君とペイちゃんのおかげで、数種のハネカクシと寄主の新しい関係がわかったのは収穫だった。古い標本やトラップ採集で得られた「形態から好蟻性には違いないけど生態不明のハネカクシ」の生態ははっきりするのは、なんとも興奮するものだ。
昨日、ちょこっと寄った場所が乾燥したフタバガキ林で、雨で1時間もいられなかたっが、いくつか今回の調査の新顔が見つかった。
アオバナテングビワハゴロモPyrops viridirostris。かわいい。
タマヤスデを襲うハシリハリアリの一種Leptogenys sp.。青くて美しい種。この後、解体するわけでもなく、重そうに巣に運んで行った。
アリネジレバネの雌。雄はアリに寄生するが、雌はバッタ目に寄生する。中瀬博士にお土産。
チェンマイにて
昨晩、チェンマイに到着した。ホテルはGreen Tiger Hotelというところで、スイス人のご主人とタイ人の奥さんの感じの良いところ。
今日は朝からDoi Inthanonに行って来た。同行の方がツノセンチコガネを見たいというので、昨年に続き、2度目の訪問。天気は悪かったが、地面にブツを置くと、次々に飛来して、目を楽しませてくれた。
夜はチェンマイ料理のHuen Muan Jaiというレストランに行き、地元の料理を堪能した。タケノコの肉詰めとか、カレー麺とか、とってもおいしゅうござった。
http://www.tripadvisor.com/Restaurant_Review-g293917-d3492119-Reviews-Huen_Muan_Jai-Chiang_Mai.html
明日からDoi Suthepでの調査が始まる。
解放
ようやく初校が手を離れた。帰国後に2校を見ておしまい。本当に疲れた・・・。
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忙しいといいつつ、帰り際に今回のタイで採集したヒゲブトオサムシを展足した。このなかまはアルコールに長く漬けると翅が開いてしまうので、できるだけ早く展足しないといけないからである。
左手前は小松君がオオズアリの巣から採ってくれたPaussus属の未記載種。以前にFITで採れた1頭があったのみだったので、追加が採れたうえに、寄主がわかって嬉しい。アリは首都大の江口さんに早速送付した。
右手前はEuplatyrhopalus tadauchiiで、標高350mのところで灯火に飛来したもの。その上の2頭はEuplatyrhopalus vexilliferで、12キロ離れた標高900mの地点でFITに入った。この2種が狭い範囲で微妙に住み分けていることがわかったのは嬉しい。また、私が記載したtadauchiiはvexilliferの地理変異である可能性を危惧していたのだが、ごく近くに生息していて、形態的にも明瞭であり、はっきりと別種であることがわかったのも収穫。