断虫亭日乗

過ぎ去る日々の思い出をつづるだけ

それにしても、全く新しい分類群を始めるというのは、なにもかも新鮮で楽しい。しかし日本では、一分類学者が様々な分類群に幅広く手を伸ばすのはあまりいい目で見られないし、実際にそういう人は稀有な存在である。その理由は、専門の分類群の研究が疎かになるということが第一であろう。その「疎か」によって、専門群のファウナ解明が遅れるということと、専門群の研究の質が落ちることが心配されてしまう。その心配もわかるが、そういったことは研究者の個人の資質や研究のスタンスの問題である。それ以前に、様々な分類群に手を伸ばすことによるメリットも忘れてはならない。研究に伴ういろいろな分類群の形態観察は、専門群の知識を深めることにつながるし、目や科レベルの分類学にはびこる慣習を批判的に見ることもできる。分類学では慣習が優先して本質的な誤りがなおざりされることが多々ある。